カエルの減少

2012年6月第3週

今週の野菜セット

左から

梅雨入りしたとたんに梅雨の中休み。よくあることです。でも、中休みの間も梅雨寒が続いていたので、農家は困惑気味。今週に入って、ようやく夏の陽気になってきました。

わたしたちにとっては過ごしやすい涼しさも、夏野菜の生育には不向きですからね。稲の生育も遅れているようで、水を抜いている田圃が目立つようになりました。ある程度、稲が育ってくれば、田圃の水は保温の働きをするようになるのですが、今年のように育ちがわるいと逆に苗を弱らせるのだそうです。

カエルたちのラブコールも控えめです。日暮れ時にはうるさいぐらいのカエルの声が、今年はところどころで聞かれる程度。いったいどうなっているんでしょう。カエルの減少はヘビの食糧源の枯渇につながりますし、はるばると越冬地からやって来たサギたちの生活をも直撃するはず。他人事ではありません。動物たちが住みづらいところでは、人の生活も劣化せざるを得ないからです。

あちこちでサギの姿が目立つようになりました。サギは渡り鳥ですが、近年、幼鳥は渡りのリスクを避けて、親鳥が去った後に残っています。冬があたたかくなったので、幼鳥たちの食糧ぐらいは確保できるようになったからでしょう。

ところが今年は厳冬でした。どれくらいの幼鳥たちが生き残れるか、気が気ではなかったのですが、逞しく人家の池から鯉や金魚を拝借しながら冬を越すことができたようです。幼鳥の羽根は灰色で、それが保護色の役割をしているのですが、親たちが帰ってくるころには抜け替わって白くなります。だからこの時期になると急に真っ白いサギの姿が増え、どれが去年の幼鳥でどれが帰ってきた親鳥なのか、見分けがつかなくなるのです。

田植えが終わったばかりの田圃にやって来るのは、カルガモとハシボソガラスで、まだ灰色の羽根をまとったサギの姿はまばらでしたが、これからはサギが主役。渡り鳥に不親切で、ツバメの巣を落としたりするカラスも、なぜかサギには好意的で、餌場を譲ってしまうんですね。越冬中の幼鳥がカラスからいやがらせを受けることもありません。

両者の間でなにか契約でも交わされているのかもしれませんが、それはともあれ例年なら幼鳥たちの羽根が抜け替わり、親鳥と合流すると安心してかれらの存在を忘れることができたのですが、今年は餌不足が予想されるので、なかなかそれができず、ただの田園風景にしてしまうことができません。

スズメが減った。カエルが減った。ツバメが来ない、と身の回りからちいさなピースがすこしずつ抜け落ちてゆく。そんな中で、例年通りサギが飛来してくれたのに、なんのもてなしもできないのです。これはそのまま、人間界の貧しさにも直結するんじゃないでしょうか。

ほんの十年ぐらい前まで、こういう雨の季節や夏の夕立時、カエルが農道まで溢れかえって、車が通れないぐらいになったものでした。でも、通らないことには家に帰れない。そこでなるだけカエルを潰さないように走ろうとするのですが、スピードを落としたところでカエルたちは除けてくれません。すでに累々と屍体の横たわる路上に、さらなる犠牲者を増やしながら通るしかなかったのです。

夜間には潰されたカエルの内臓が、ヘッドライトに照らし出されます。カエルの内臓はまるで反射板のように、異様に赤くこちらの眼を射るんです。おびただしいカエルを殺しているという罪悪感があるものだから、それが不気味で、無言の抗議をされているようなイヤーな気がしたものです。

そんな思いをしなくなって、よかった、よかったと思っていたのもつかの間、カエルの減少という大きな問題にぶつかってしまったんですね。カエルを轢き殺すのは一見、残酷なようですが、翌朝にはきれいになくなっていましたから、あれもまたカラスたちの貴重な食糧。けっして無駄な死ではなかったわけです。

ここまで書いてきて、ふと思ったのですが、スズメやカエルの減少というのは、そのまま第一次産業の下降ラインと一致していたのでは?農業が元気になれば、生きものたちも元気になる。農薬と化学肥料に依存した集約農場ばかりが元気になっても、なんの解決にもなりませんから、遠回りなようでも有機農業を元気にしてゆくほかありません。地に足がついてない、理想論だと叩かれるかもしれませんが、大地を疲弊させ、生態系を狂わせる農業のほうがよほど地に足がついてない。後先を考えない暴挙なのではないでしょうか。

今週の野菜とレシピ

今週はトマトが入る予定でしたが、生育が遅れています。夜間の低温が影響しているようで、新じゃがも来週に持ち越されました。

逆に高温に弱いズッキーニは順調みたいです。1センチ弱の輪切りにして素揚げ。揚げたてを麺つゆに浸してみてください。お好みで一味唐辛子をふって・・・。モロッコいんげんを半分に折って、いっしょに揚げ浸しにするとおいしいですよ。

カリフラワーを茹でるときには、ひとつまみの塩といっしょに小麦粉と酢を少々、お湯の中に入れておきます。仕上がりがきれいなだけでなく、口当たりもなめらかになります。

オカヒジキはしゃりしゃりした食感が特徴ですから、茹ですぎないこと。塩ひとつまみを入れたお湯に入れ、沸騰したらすぐに火から下ろしてください。ゆっくり10数えたらザルに上げて、水で粗熱を取り、水気をよく切ってから数カ所、包丁を入れておきます。そのまま醤油とマヨネーズで食べるか、辛子醤油で和えてどうぞ。