雑草のお花畑

2013年3月第2週

今週の野菜セット

左から

梅の花が咲きました。辛夷の花芽もふくらんで、銀色に輝いています。ほかの木々の芽もふくらみはじめていると見え、山全体に赤みがさしてきました。しかし、この桃色気分は一時的なもので、また寒さがぶりかえしそう。一進一退を繰り返しながら春になるのはわかっていても、姿が見えかけているのになかなか現れない人みたい。もったいぶってないで、さっさと顔を見せればいいのにね。

春の足音が近づくにつれ、それに追われるかのようにそわそわしはじめる人もいます。農家の人たちです。本格的な田植えの準備は四月に入ってからですが、この時期になるともう頭の中は田圃一色になるみたいです。春・夏野菜の準備もありますしね。

春になるのはいいけど、あーあ、また忙しい季節がやって来る。そんなため息が聞こえてきそうです。わたしのような日曜農家でもそれはおなじで、春一番が吹いたとたん、夏野菜のことが気になりはじめ、馴染みの種屋さんに顔を出す。あれもこれも・・・と種を選んでいると、おばさんが出てきて、だめだめ、今ごろ買ったら、またどこにしまったかわからなくなる。気温が二十度になってからでも遅くないから、といって、わたしが選んだ種を棚にもどしてしまうんです。商売気のない種屋ですが、おばさんのいう通りなのでしょんぼり帰ってくるしだい。

そんなことより畑の準備でもはじめるべきなんでしょう。ところが畑に出てみると、ついこの間までなにもなかったところが一面、お花畑のようになっていました。オオイヌノフグリの青い花と、ハコベの白い花。それに名前はわかりませんが、小さな紫色の花が咲き乱れています。ごちゃごちゃと混じり合うのではなく、まるで造園家の手になるかのように、畝ごとに住み分けて層になっているんです。

なかなかの景観ですが、なぜそういうことになるかというと、栽培している野菜によって吸収するミネラルなどの養分がちがうから、残留している養分もちがってくるわけですね。それによってちがった種類の草が生えるから、こういうことになるわけです。うつくしいばかりでなく、このお花畑には土壌のミネラルバランスを均一にする働きがあります。それに、春先の強い風による土壌の流失を防ぐものでもあります。

だから夏草はせっせと抜いたほうがいいけれど、春の雑草はほんとうは抜いてはいけないものなんです。でも、今はそれに除草剤をかけてしまう農家がほとんど。除草剤の害もさることながら、畑の土がバランスを失って狂ってしまうのがおそろしいと思います。

日曜日、このあたりにも黄砂が舞いました。タネツケグサという、かわいい白い花をつけているけど、放っておくと手がつけられなくなる草を抜いていたら、にわかに風が強くなって空がかき曇り、目を開けていられないような粉塵の嵐になりました。

慌てて畑から庭先へ、洗濯物をかたづけに走りましたが、生乾きの洗濯物を取り入れながら、よくもわるくも世界はひとつなんだなあ、とあらためて思ったしだいです。さいわい三十分かそこらで風はおさまり、元の青空が顔を出しましたが、しょっちゅうこれに襲われている九州の人はたいへんだろうな、と思いました。一方で、この時期になっても冬の嵐に遭遇している北国もたいへんそうです。

たいへんといえば、ときどきこのあたりの上空を自衛隊の輸送機が通過しますが、低空飛行をするので騒音が半端ではありません。それを耳にするたび、普天間の米軍基地のことが頭をよぎります。それにオスプレイという欠陥ヘリコプターが加わるのですから、たまったものじゃありませんよね。

岩国基地でも飛行訓練がはじまったそうですが、そんなところばかりじゃなく、横須賀あたりに持ちこんで、東京の上空を飛ばしてみたらどうでしょう。そうしたら反対運動も他人事ではなくなるし、それが大きなうねりとなって政府も動かざるを得なくなる。米軍基地そのものの存続がむずかしくなると思うんですけどね。

今週の野菜とレシピ

今週はニンジンが入る予定でしたが、まだ小さすぎるため、来週に持ち越されました。

青首大根も小ぶりです。スライサーで皮を剥き、短冊に切ったら鰹節とポン酢でサラダ風に・・・。大根の皮は塩をふってしんなりさせてから、キムチの素で和えると美味。歯触りがよく、カクテキよりおいしいぐらいです。

フキノトウといったらてんぷらでしょうか。油で揚げると苦みがやわらぐので、これがいちばん無難かもしれませんが、個人的にはさっと湯がいたものを、ちょっと甘めの天つゆで食べるのがベスト。刻んで生のまま、あるいは胡麻油で炒めてから味噌をからめたフキ味噌もおすすめです。

冬はカロリーの高い食事が多くなる上、汗をかく機会がないので、体内の毒素が排泄されることがありません。その蓄積された毒素を抜いてくれるのが、フキノトウなど、春先の野菜の苦みです。本格的な春を迎える前に、体調を整えておいてくださいね。