春の山

2013年4月第1週

今週の野菜セット

左から

先週は曇り空が続き、ときどき雨もぱらつました。花冷えの一週間でしたが、雨の合間を縫って花見は無事に終了。山裾の桜を堪能した後は、山頂に群生するカタクリの花を見物する予定でしたが、これは雨のため中止になりました。週末に花見を予定していた人もがっかりしているのではないでしょうか。

辛夷(こぶし)に桃、桜、レンギョウと、今年は北国の春のように一時に開花して、ひと足先に開花していた梅もそれに加わって、百花繚乱の体をなしていたのが冷たい雨に濡れそぼっています。この間までのあたたかさがウソみたいですが、今週は春がもどって来てほしいものです。

この時期は、山の中の雑木も花盛り。桜のような華やかさはありませんが、キブシの花が垂れ下がり、日当たりのいいところではニワトコが可憐な白い花をつけています。谷底に降りると、アオキの雄花が花盛りで、目をこらすとハナイカダの葉っぱの真ん中に小さな蕾がついています。

でも、春先の山の中って、なぜかガス漏れのような不穏な臭いに満ちているんですよ。それがどこから来るものなのか、ずっと謎だったのですが、犯人はサカキだということがわかりました。サカキの花は葉っぱの下に隠れていて、しかも下向きに咲くので、なかなか目につかなかなかったんですね。

いったいサカキはこの臭いでどんな虫を寄せつけるのか。これが新たにできた謎なんですが、注意深く覗いてみてもそれらしき姿が見つからない。ラクレシアのように生ゴミ臭でハエを寄せつけ、受粉する花もあるのですから、ガス臭を放つ花があっても不思議はないのかもしれませんが、いったいどんな虫が来るんでしょう?

これが町中だったら、ガス会社の職員が飛んで来て、あたりをかき回したどさくさに紛れて受粉するということもあるんでしょうが、こんな山の中ではねえ。インターネットで調べてもみましたが、臭いに関する話題は豊富なのに、虫に関する情報はゼロ。ただ、臭いについて、これは屍臭以外のなにものでもない、という書きこみがあったので、なるほどと思いました。

ガス漏れでは虫は反応しないでしょうが、屍臭となれば惹きつけられる虫もいるはず。やはりハエの仲間なんでしょうが、植物は繁殖のためにはなんでもやってしまうんですね。さすが、神と人の境とされるサカキだけのことはある、と感心しましたが、やっぱり臭いには閉口しています。

すこし早いのですが、夏野菜のことでご報告です。二十年以上、トマトを作ってくれていた福田隆夫さんが、ついに撤退してしまったのです。

トマトは夏野菜ですが、大玉トマトは雨にあたると裂果するため、どうしてもビニールハウスが必要になってきます。そうすると真夏にはハウス内の気温が高くなりすぎて、トマトの寿命が短くなってしまうんですね。採算が合わないため、このあたりでは夏の盛りにトマトを出荷する人がいなくなってしまいました。福田さんもいつまで頑張ってくれるか、不安ではあったのですが、ついにそのときが来てしまいました。去年あたりから体調不良を訴えていましたしね。

しかし、わるいニュースばかりではありません。わたしの近所で、農家の生まれでありながら今では農業とは無縁になってしまった女性が、農地をそのままにしておくのはもったいないし、罪悪感のようなものもある。親から受け継いだ有機農法の技術も廃れさせたくないので、益子GEFに参加させてほしいといってくださったのです。

相田久子さんは裏山にお花畑を作って、みんなが散策できるスペースにしたり、月に一度、バリトン歌手の右近義徳さんを招いてミニコンサートを催したりしています。そのコンサートには高齢者を招いて、合唱したりもするのですが、そこでうちの母がお世話になったのがご縁になりました。

バリトンの歌声もすばらしいのですが、そこで提供される相田さんの手料理につられて来る人も多いのではないかと思います。わたしなどもそのひとりなのですが、ともあれそんな素敵な方が仲間になってくれたのです。その彼女がこの夏、中玉トマトを作ってくれることになりました。

中玉トマトはビニールハウスがなくても作れます。大玉トマトのようなフルーテイーな味わいはありませんが、昔ながらのトマトの味と香りで、初期消毒も必要ありません。好子さんも露地でプチトマトを作るといってくれましたしね、福田さんのトマトがなくてもなんとか夏を乗り切ることができそうです。また、大玉トマトのほうは来月あたりから、青山さんの親戚の方が出荷してくださることになりました。こちらのほうは初期消毒をしているため、完全無農薬ではありませんが、福田さんのトマトもそうだったのでご了承ください。

今週の野菜とレシピ

今週は最後の牛蒡がはいります。畑に残っている牛蒡がずっと気になっていたそうですが、顔面の帯状疱疹があったため、なかなか手がつけられなかったそうです。牛蒡堀りは重労働な上、牛蒡を傷つけない繊細さも要求される作業です。ようやくそれができるようになったんですね。

牛蒡は薄い皮の部分に栄養が集中しているため、扱うほうにも繊細さが要求されます。やさしく手洗いして、皮がはがれないようにしてください。それさえ注意すれば、後は笹掻きにしようがぶつ切りにしようがご自由に・・・。わが家では大きめに切ったものを、酒と水と梅干しに砂糖を少々加えてことこと煮ておきます。そのまま食べてもいいですし、ニンジンといっしょに油炒めして砂糖と醤油を加えてもよし。飽きてきたら、衣をつけてフライにするという手もあります。

青山さんのニンジンは生で食べるのが最高、という声が寄せられています。ニンジンだけでなく、葉っぱのほうも細かく刻んで炒めご飯に混ぜたり、スープの浮き実にしてどうぞ。細切りにしたニンジンと葉っぱのかき揚げもおすすめです。エシャロットもいっしょにてんぷらにすると、甘くておいしいですよ。

来週は愛媛から春キャベツが届く予定です。