ヘビのいない山

2013年4月第3週

今週の野菜セット

左から

週末になって、ようやく春らしい陽気になりました。寒のもどりというでしょうか、春は名のみの寒さが続いていましたものね。

気温は低くても、地温は上がっているんでしょうか。今年は山菜が出てくるのが例年より半月ほど早いみたいです。山歩きをしていると、日当たりのいいところではもうワラビやゼンマイが出ています。裏庭のコゴミや山ウドも先週あたりから出はじめましたから、季節は確実に動いているんですね。

山椒の芽も青々としてきましたから、タケノコもそろそろ顔を出しはじめるかもしれません。四月も半ばになってストーブを点けながら、山菜に舌鼓を打つというのも妙な話ですが、今年の春はそんな番狂わせをする、一筋縄ではゆかない春みたいです。

そんな春なので、農家はたいへん。そろそろ夏野菜の種を蒔く時期なのに、霜が降りたりするんですから、日曜農家のわたしでさえ右往左往しています。種苗店のおばさんも、さすがにもう早すぎるとはいわなくなりましたが、渋い顔をしています。売るのはいいけど、ちゃんと温度管理しないと種を蒔いても無駄になる、というんですね。

ようやく種を売ってもらえたものの、蒔いていいのやらわるいのやら・・・。こんなとき、ビニールハウスがないというのは不便なもので、空模様を見ながら苗床を室内に入れなければなりません。今年ははじめて作る野菜もあるので、かなり緊張しています。どんな野菜かというと、沖縄ではゴーヤとおなじぐらいポピュラーなものですが、こちらではほとんど知られていないモーウィという瓜の一種。去年の夏、はじめて口にしてあんまりおいしかったものだから、種を取っておいたんです。楽しみにしててくださいね。

なあーんて、こんなこと書いてしまったら、ますます緊張するのにね。これがあるので、今年のゴーヤは青山さんにお願いしました。去年、ハクビシンにやられて散々だった中玉トマトにも、再度挑戦してみるつもりです。あれも、これもと欲を出すのはいいけれど、その前に雑草の花だらけになった畑をなんとかしなければならないんですけど・・・。

木々が芽吹きはじめるこの時期は、そこらじゅうが生命力に満ち溢れています。山歩きには最高の時期。雪に閉ざされた山道もいい、新緑に彩られた山道もいいけれど、エネルギーのかたまりみたいな木の芽に囲まれた山には、抗いがたい吸引力があるようです。だからつい、やることが山ほどあるにもかかわらず、ふらふらと入りこんでしまうんですね。ふらふらしたくなるのは人間だけではないと見え、キツネ・タヌキの臭いがあちこちに残っています。おしっこなのか体臭なのかはわかりませんが、かれらが出没したところにはしばらく臭いが残るんですね。獣道のようなところでは、キジやコジュケイも頻繁に姿を見せますから、もう巣作りがはじまっているのかもしれません。

この時期、山に入ると思わぬところにヘビがいて、ぎょっとすることがあるのですが、ここ数年はそういうことがなくなりました。ヘビがいなくなっているのです。とくに大型の青大将はほとんど見かけなくなり、裏山にいるのはほとんどがシマヘビかヤマカガシ、それにマムシぐらいでしたが、それも滅多と見られなくなりました。安心して山歩きができるようになったのに、喜んでばかりもいられないのは、そういう緊張感が失せてしまった自然というのは破綻しかかっているからですね。

山の中でさえそうですから、庭先で見かけるのはひと夏に数回程度。二十年ぐらい前、春先の強風で波板トタンが飛ばされてきたことがあり、それをかたづけようと持ちあげたところ、まるでパッチワークみたいに十匹以上のヘビが身を寄せ合っていたことがあります。冷や汗ものでしたが、冬眠から覚めたヘビたちが寒さから逃れるためにそういうものが必要だったわけです。以来、裏庭に簡単な避難所を用意しているのですが、年々客足は減る一方で、先週、急に寒くなったときにはかなり期待していたのですが、ヘビの姿はなく、がっかりしたのでした。

ヘビの減少には諸説あって、ひとつには捕食するカエルの減少が挙げられます。これがいちばん深刻なのでしょうが、イノシシの増加もそれにひと役かっているみたいです。山の中の腐葉土が多いところには、イノシシが鼻先でかき回しているのですが、これはミミズを捕食した痕跡。ミミズは高蛋白、高カロリー食品なのだそうです。おなじようにヘビも食べてしまうんですね。

ヘビもけっこう天敵が多いみたいです。キジはもちろん、トンビやカラスにも狙われます。それでもバランスは保たれていましたが、そこにイノシシが参入してくるともういけません。オオカミを絶滅させてしまったツケが、今ごろになってまわってきたのかもしれませんよね。

今週の野菜とレシピ

今週も愛媛の春キャベツが入る予定でしたが、六日の爆弾低気圧の影響でハウスが飛ばされたうえ、そこに大量の雨が降ったため、壊滅的な被害を受けたそうです。先週はそんな中から、比較的状態のいいものが送られてきましたが、今週はもう無理とのこと。

先週のキャベツの中にも、もしかしたら傷みの出ているものがあったかもしれません。こちらでもよく見て箱詰めしたつもりですが、輸送中に傷みが出る場合もありますので、問題がありましたらご一報ください。

そんなわけで、今週はキャベツの代わりに山菜類が入ります。うまい具合に山ウドコゴミが出てきてくれましたので、これはてんぷらに・・・。葱坊主もてんぷらにするとおいしいので、これは青山さんからのプレゼントです。葱坊主は葱の花。やわらかい蕾をお送りしますので、春の香りをお楽しみください。

今週の天候しだいですが、来週はタケノコが入りそうです。タケノコ掘りをする青山さんが、今から憂鬱そうなのがちょっと気がかりなんですけどね。