カラスの巣作り
2013年5月第2週
左から
- 山ウド
- トマト
- チンゲンサイ
- オカヒジキ
- ほうれん草
- カブ
日差しは暑いぐらいなのに、風が冷たい。しかも朝夕は冷えこんで、霜まで降るしまつです。五月の連休といったら、初夏の陽気がふつうなのに、今年はなんだか変ですね。
時ならぬ霜にあたって、フキは葉が黒くなってうなだれています。じゃが芋も新芽がやられたといいますから、トマトも茄子もピーマンも、なかなか定植できません。
山歩きをしているときに、冷たい風にあたると心地よいものですが、それもほどほどでないと、汗ばんだ身体から体温が奪われてしまいます。田植えをしている人たちも同様とみえ、農道ではあちこちからくしゃみをするのが聞こえてきます。カエルもくしゃみをしているかもしれません。
カエルの声は昼間より夜間のほうが賑やかになるものですが、夜はストーブがほしいぐらいですものね。カエルたちが静まりかえるのも無理はありません。くしゃみはしないまでも、身を寄せ合って口々に不安を鎮めあっているのかもしれません。わたしも仲間に入れてほしいものです。
カラスの巣作りも一段落したようです。どうしてそれがわかるかというと、立てかけても立てかけても倒れてしまう庭箒が、ちゃんと立ったままになっているからです。箒の先が巣作りに使われるんですね。
このあたりでは巣作りの材料には不自由しないはずですが、小枝を拾い集めるよりも箒のほうが手間が省けるのかもしれません。たぶんそれは外枠部分。内装にはタヌキの毛が使われたにちがいありません。というのは、すこし前に道路脇で轢かれていたタヌキを見つけたので、柿の木の根元に埋めておいたのですが、それが掘り返されていたからです。タヌキの毛の敷物なんて贅沢ですよね。
昔、山羊がいたころには、たてがみがばっさり切り落とされて、なにごとかと慌てたものでしたが、それもカラスの仕業でした。カラスが背中にとまっても、山羊がいやがる風ではなかったので、たぶん合意の上だったんでしょう。
宮崎学の写真集「カラスのお宅拝見」(新樹社刊)を見ると、ひと口に巣といっても百羽百様で、骨組みから内装にいたるまでさまざまです。その中にもありました。タヌキの死骸から毛をむしり取って、敷き布団にしている夫婦が・・・。羽毛布団もありましたが、これは自分のものなのか、あるいは鳩や小鳥のものなのか、ちょっと区別がつきません。
この写真集では北海道から九州まで、全国各地の様子が紹介されているので、カラスの巣にも地方色があるのがわかります。かと思うと、全国に共通しているものもあり、それはグラスウールのような住宅用断熱材、化繊綿などがそう。おそらく断熱材は住宅の建築現場から、化繊綿のほうは捨てられた布団などからむしってくるケースもあるでしょうが、廃車のシートが利用されることが多いそうです。日本の廃車数は年間、四百万台にも及ぶといいますから、カラスの巣を見れば、ヒトの暮らしも見えてくるというわけです。
こうして見ると、箒と動物の毛を利用した巣なんていうのは、オール自然素材の健康住宅ということになるのかもしれませんね。
動物写真家の仕事は、ほとんどが待ち時間。雪の中で凍えながら、あるいは炎暑の草むらでヤブ蚊に刺されながら、たった一枚の写真のために何時間も、場合によっては何日も待ち続ける忍耐強さが要求されます。
でも、カラスのお宅を拝見するには、そういう時間は要しません。もちろん下調べには時間がかかっているでしょうけどね。そのかわり必要とされるのは、重たい撮影機材をかついで高い木や鉄柱に登る度胸と、体力です。当然、親鳥から攻撃されながらの撮影でしょうから、待ち時間とは別種の忍耐も必要なわけですね。
宮崎学氏がひたすら待ち続けたフクロウの写真集も力作でしたが、全国を動き回って銀座の街路樹にも登ったという、こちらのほうも負けず劣らずだと思いました。
それはそうと、カラスの中にも几帳面なのや、大雑把なのがいるみたいで、卵がきれいに並べられているのから、無造作に置かれているのまで、じつに個性的でした。卵の数も、餌の獲得量に左右されるのか、親鳥の年齢によるのでしょうか。四つも五つもあるのから、たったひとつというのまで、さまざまです。うちの箒が倒れはじめると、さあ、どのタイプなんだろう想像をふくらませているしだいです。
今週の野菜とレシピ
今週は寺島一朗さん(山形)のオカヒジキが入ります。オカヒジキはしゃりしゃりした食感が売り。さっと湯がいて、辛子醤油で和えるか、マヨネーズに醤油をすこしたらしてお召しあがりください。
山ウドはきんぴらがおすすめ。皮をつけたまま食べやすい大きさに切って、油炒めしてください。