虫たちの黄昏
2013年11月第2週

左から
- 小松菜
- 京菜
- ほうれん草
- ブロッコリー
- ユズ
- 赤カブ
- 唐芋
- 青首大根
ようやく紅葉がはじまったかと思うと、深まる秋を楽しむ間もなく、真冬に突入しそうな気配がします。今週あたり初霜が降りるんでしょうか。
気温が下がってくるにつれ、産卵を終えたカマキリが一匹、また一匹と畑からわが家のほうにやって来て、洗濯物や網戸にしがみつきます。ついこの間まで青々としていたカマキリが、まるで紅葉したかのように赤みを帯び、あるものは枯れ葉色となって朽ちてゆくのです。産卵後、いくらかほっそりした身体をかたづけると、また新たなカマキリがやって来て、こちらのほうはまだ生きています。でも、明日になれば動かなくなる。
犬猫の出入り口があるわたしの寝室では、不思議とみんな枕元にやって来ます。わたしの頭部をはさんで、右と左にオスとメスがいるなんてスリリングな状況になることもあるのですが、この時期になると争うこともないようで、翌朝には仲良く並んで死んでいます。それを猫の目につかないところに保管。みんなまとめて埋葬することになっています。
畑のあちこちに産みつけられた卵のほうは、目についたものだけ、物置小屋の軒下に入れておく。これだけ注意深く保護していても、年々カマキリが減っているような気がするんです。バッタやコオロギは減る気配がないのにね。
カマキリだけでなく、蜘蛛もすくなくなっているような気がします。紅葉がはじまると、それを合図に家の中の蜘蛛の巣を一掃するのですが、今年は小ぶりな巣が多く、大邸宅が見あたらないのです。
蜘蛛がいるということは、環境のバランスがとれている証拠だといいますから、家の中はともかく畑の中にいる蜘蛛はとくに大事な存在です。トマトの支柱など、日当たり良好、風通しがよく餌も豊富。不動産屋のチラシ風にいうと東南角部屋、駅近、スーパー徒歩3分といった好条件なのに、今年は空き部屋が目立ちました。家賃が高いわけはないんですけどねえ。
こちらが蜘蛛がいる、いないで一喜一憂しているというのに、この夏、ホームセンターに行ったら蜘蛛専用の殺虫剤なんていうのがありました。バカ、そんなもの作らなくても、蜘蛛はすべての殺虫剤に弱いんだよ、と思いながらそのスプレー缶を手に取ってみたら、邪魔な蜘蛛の巣、これで一掃なんて書いてありました。わたしにお金があったら、それ全部買い占めて、小型爆弾にでも改造しちゃうんだけど・・・。ま、買い占めて闇に葬ってしまいたいものって、これにかぎったことではありませんけどね。
家の中に蜘蛛の巣はおろか、虫一匹の侵入も許せない人って、けっこういるみたいですけど、家の中を薬剤だらけにしてしまったらどうなるんでしょう。そういう偏執的な潔癖症がやがてアレルギーを生み、無害なものまで有害化して敵にまわしてしまう。ハウスダストやダニがいい例で、かつてはあってあたりまえ、空気のような存在だったはずが、今では厄介なものになってしまった。杉や雑草の花粉も同様です。
これって善良な市民をテロリストと化してしまう、強権体制とどこか似ていると思いませんか?ある日突然、凶暴なテロリストが出現するわけではなく、投げつけたボールが跳ね返っているだけ。あたりまえの現象なんですよね。
今週の野菜とレシピ
今週は好子さんのブロッコリーが入ります。これはレシピなど要りませんよね。お好きなようにお召しあがりください。
青山さんの唐芋は、八つ頭に似たホクホクした食感が売り。濃いめの出汁で煮て、柚子の皮を添えると高級料亭の味。ほんとの高級料亭だと、海老のしんじょや生麩などといっしょに炊き合わせるのでしょうが、表示の間違えようのない唐芋のみで勝負してみましょうか。
ブリ大根
そろそろスーパーの魚売り場にも、ブリのアラが並ぶようになりました。ブリ大根を作るときには鍋をふたつ用意してください。一方の鍋には水を入れて沸騰させ、もう一方の鍋にはぶつ切りにした大根を入れて水から煮ておきます。
水を煮立てた鍋にはブリのアラを入れ、すぐにお湯を捨てて生臭みを消してから、砂糖と酒と醤油でことこと煮ます。味つけは濃いめ。煮汁が半分ぐらいになって、ブリにしっかり味がついたら、大根の鍋のお湯を捨て、半透明になった大根の上にブリを並べ、煮汁も入れます。ひたひたになるぐらいまで水を加え、落としぶたをしたら、後は大根に味がしみるまで煮こむだけ。
こちらは高級料亭ならぬ大衆食堂の味ですが、器に盛ってから柚子の皮を刻んで散らすと上品な仕上がりになりますよ。