モミガラで炭作り

2013年10月第1週

今週の野菜セット

左から

急に秋めいてきましたね。

あたたかいものが恋しい季節になりました。夕刻に取り入れた紫蘇の束から、夕食後、ガレージに腰掛けて実をしごき落とします。手押し車に山盛りにした紫蘇を処理するのに、二・三時間はかかるでしょうか。上着を着ていても身体は冷え切ってしまうので、お風呂に直行し、湯船に浸かると手足の指先がじんじんしびれ、身体がとろけてしまいそう・・・。仕合わせなひとときです。

布団のぬくもりも、先月とは打って変わってありがたいものになってきました。春眠暁を覚えずといいますが、秋眠もまた、心地よすぎて暁を覚えるということがありません。気温が下がるにつれ、布団から出るのが苦痛になってくるんでしょうね。

紫蘇の実しごきは年中行事みたいなものですが、二・三時間かけて奮闘しても、バケツに半分ぐらいの量にしかなりません。それが三日・四日と続くのは、早く処理してしまわないと、紫蘇の実がかたくなってしまうから・・・。今週は青山さんが野菜セットのため、おなじ作業をしています。

青山さんも、それを終えたらお風呂に直行。仕合わせに浸っていると思いますよ。夕食後、だらだらと時間を過ごして、そろそろ寝るか、というときになって入浴するのとは格段の差があると思います。わたしなど、この幸福感のために夜なべ仕事をしているといっても過言ではないくらい。「農」に関する仕事には、面倒なこと、きついことが多いのですが、かならずなにかしらご褒美というか、オマケのようなものがついてくるような気がします。

去年の冬は寒さが厳しかったので、うちの畑では年明けの野菜セット用に作っていた、比較的寒さに強いという聖護院大根が全滅。自家用の空豆やら、ブロッコリーなども大半が使いものになりませんでした。

気象庁の予報では、去年より寒い冬になるということですが、それを信じる、信じないは別として、最近の気候は夏はより暑く、冬はより寒くなる傾向がありますからね。そこで畑に暖房装置を入れることにしました。

暖房といっても、電気やガスを使うものではありません。稲を脱穀したときに出るモミガラを大量にもらってきて、それに煙突を立て、畑で炭にするのです。べつに目新しいことではありませんが、目新しいうちは農家がこぞってやっていたのに、だんだんやる人がすくなくなり、わたしもここ十年ほど燻炭作りなどしていなかったのです。今でも田圃の中で煙突から青い煙が立ちのぼっていることはありますが、それはただ、効率よく燃やすためのようで、翌日通りかかったときには、みんな灰になってしまっています。燻炭を作ろうと思ったら、常に燃えかたを監視して、先に黒くなったところにはモミガラを上乗せしたり、水をかけたりしなければならないので、面倒くさいのかもしれません。灰も肥料にはなるかもしれませんが、土をあたためてはくれないのです。

ひさびさにやってみると、これが面倒どころか、けっこう楽しいのです。燻炭を作っていると、青白い煙がたなびき、あたりにたちこめます。その爽やかな香りに包まれて、ときどきモミガラの燃え具合を確かめながら、夏野菜の後かたづけ。台風18号で横倒しになったトマトのかたづけなど、面倒なことこのうえないのですが、かたわらでモミガラが燻されているというだけで、そんな作業も苦にならなくなるのです。

おおむね黒くなってきたところで、山を崩して地面に広げ、水をかけて灰にならないようにするのですが、その熱で雑草の種が発芽できなくなり、そのうえ炭に含まれていた木酢が畑にしみこむので、土中にいるネキリムシなどもいなくなるという寸法。そしてこれが太陽光を吸収することで地温が高くなるというわけです。

守るべき野菜の根元には、たっぷりと敷いておかなくちゃね。次の日曜日はトマトをかたづけたところで燻炭作りをする予定。今週もまた、モミガラ集めに奔走することになりそうです。

今週の野菜とレシピ

紫蘇の実は半日から丸一日、水に浸けてアクを抜き、ザルに上げて水気を切っているうちに唐辛子は小口切り、生姜はみじん切りにします。唐辛子は2本入っていますが、1本で十分だと思います。生姜は親指の頭ぐらい。それを合わせ、小ぶりの瓶に押しこんで、ひたひたまで醤油を入れれば完成です。瓶にただ入れるのではなく、押しこむのは醤油の量を加減するため。3・4日冷蔵庫で寝かせてから、ご飯にのせてどうぞ。

つまみ菜とメニューにはありますが、これはター菜の間引きです。ですからいわゆるつまみ菜より味が濃く、栄養も満点。おひたしや炒めものにご利用ください。

今週のメインは年に一度の舞茸です。水洗いはせず、汚れがあったら刷毛で落としてくださいね。舞茸は捨てるところがありませんので、掃除が終わったら割りほぐして、1・2時間ザルに広げておいてください。てんぷらにしてもよし、さらに細かくほぐして胡麻油で炒め、醤油で味を整えてご飯に混ぜてもよし。

面白い料理もあります。菜食主義者の牡蠣フライとでもいうのでしょうか、舞茸を牡蠣に見立て、小麦粉をからめてからくぼみの部分に山芋をすり下ろしたものを小匙1杯ほどのせ、小麦をぱらぱらと降って、後はふつうの牡蠣同様、溶き卵とパン粉で衣をつけて揚げます。揚げたてにスダチをかけ、塩をふると、なにもいわれなければわからないほど、牡蠣フライそっくりなんです。山芋をこぼさないようにパン粉をつけるのがちょっと手間ですが、たまには家族を欺いてみてはどうでしょう。食卓も賑やかになりそうです。