暗躍する生きものたち

2013年8月第1週

今週の野菜セット

左から

空梅雨と思いきや、遅れてやって来た梅雨前線が各地で大暴れ。まるで遅刻のいいわけをするかのような大盤振る舞いでしたが、ありがた迷惑だった人も多いのでは・・・。

このあたりでも遅れて来た梅雨が明け、先週末から夏空が広がりました。それと同時に気温も高くなってきましたが、じめじめした蒸し暑さにくらべたらはるかにしのぎやすい感じがします。例年通り、お盆過ぎに秋風が立つのだとしたら、半月ほどの短い夏になりそうです。この暑さを楽しまなくっちゃね。

太陽が顔をのぞかせたとたん、わが家のトマトも次々と色づきはじめました。今年はハクビシンの食害もあまりないようです。が、わたしのトマトはあくまでも補助的なもので、主力となるのはもうひとりの新人・相田久子さんです。

ところが一向に彼女から連絡がないのです。色づきはじめたら、すこしずつでも出荷するようにお願いしてあったにもかかわらず、うんともすんともいって来ない。わたしよりも半月も早く支柱を立て、苗を定植していたのですから、とっくに収穫できているはずなんですね。気になりつつも、忙しさにかまけていたところ、人づてに彼女のトマト畑が壊滅状態。こちらに合わせる顔がない、と嘆いていると聞いて慌てて駆けつけてみたら、ほんとうにひどいことになっていました。

わたしは山の斜面をそのまま畑にしていますが、相田さんは何年もかけてそこを段々畑にし、作物を旱魃から守ると同時に集中豪雨による土壌の流出を防いでいます。ところが今回はそれが災いしたようで、イノシシの通り道にされてしまったのでした。イノシシは毎年、出没するところがちがいますが、一度通路を決めてしまうと、しばらくはそれを利用する習性があります。日暮れどき、まだ暗くもない時間帯にイノシシが現れたので数えてみたら、十数頭が続々とトマト畑に出て来たそうです。林の中にはまだ後続部隊がいたそうですが、十五頭まで数えたところでいちばん大きいのにジロリと睨まれ、こわくなって退散したのだとか。

イノシシは檜林から現れて、雑木林に消えて行ったそうですが、ちょうどその中間にトマト畑があったというわけです。ハクビシンの被害はないかと尋ねたら、自家用のスイカ畑を見せてくれました。小玉スイカがたくさん転がっていましたが、食べごろになったスイカはみんなハロウィンのカボチャみたいに穿たれて、みごとに中身が食べつくされていました。

山間部では農業は無理なのかもしれない、と相田さんは半泣き顔。動物にやられる心配のないニンニクや生姜、らっきょうみたいなものしか、まとまった量は作れないのかもしれない、とのことでした。毎年、自家用に中玉トマトを作っているから、春先は自信満々だったんですけどね。

害獣にくわしい人にスイカの話をしたら、それはハクビシンじゃないなあ。ハクビシンはトマトや果実類のほか、枝豆なんかも器用に中身だけ食べるけど、スイカの皮に穴を開けた話は聞いたことがない、とのこと。だったら、だれがそんな狼藉を?

アライグマなんですって。大きさはタヌキやハクビシンと変わりませんが、爪がかれらより大きい上、手先が器用ときています。スイカにがぶりと噛みついて穴を開けたら、きれいに中身を?きだしてしまうんだそうです。このうえアライグマまでいたんじゃ、もうお手上げ・・・。

その昔「あらいぐまラスカル」というアニメが登場し、わたしも子供といっしょに見ていましたが、アライグマってかわいいねえ、ラスカルみたいな家族がいたらたのしいだろうな、と思ったものです。中にはそう思ったら実現しないと気が済まない人たちがいて、そういう人たち相手にひと儲けしようという業者も現れ、特に保護などされていないアライグマは容易に持ちこむことができたんですね。

ところがいざ飼ってみるとアニメとは大ちがい。成獣になると噛みつかれたり、鋭い爪でひっかかれたりする事故が多発したそうで、かといって殺すにはしのびないというので、こっそり車のトランクにケージを積んで郊外へ・・・。だんだん人気がなくなって、緑が増えてくると、ここならこいつも生きていけると思うんでしょうか。手に負えなくなったペットを放し、逃げるように帰ってくる、とまるで見てきたような話をしてくれました。

その末裔たちが今、ハクビシンとともにタヌキのテリトリーを荒らしているわけです。では、ハクビシンが急増したわけは?これは毛皮を取るために飼育されていたものが、廃業時に野生化したそうで、同様にミンクなどもイタチのテリトリーに侵入しているそうです。ということはみんな人災なんですね。

イノシシが急増しているのも、食肉用に飼育されていたイノブタという掛け合わせが放逐されたのが原因で、それまで春先に二・三頭の子供を産んでいたのが、二度も三度も産むようになった上、一回に産む子供の数も増えているから・・・。イノシシにもハクビシンにもアライグマにも罪はないのですが、一部の人間が侵した罪を農家が償わねばならないというのも、なんか割り切れませんよねえ。

いいわけが長くなりましたが、そんなこんなで中玉トマトがこの夏のメニューからなくなってしまいました。ついでにもうひとつ、わたしが挑戦するつもりだった赤毛瓜(赤モーウィ)は採取した種が若すぎたのか、さっぱり発芽せず、近所の沖縄料理のお店の方から分けていただいた数本の苗を定植するにとどまりました。これはだれのせいでもない、わたしのミスというか、認識不足でした。あれやこれは、ほんとうに申しわけありません。

今週の野菜とレシピ

今週はきゅうりがお休み。連日の雨でうどん粉病が発生したため、収穫量が落ちているそうです。

気温が高くなって喜んでいるのがモロヘイアゴーヤ。ゴーヤが苦手という方には1センチ弱の輪切りにして、中心部の種とワタを抜き、小麦粉、溶き卵、パン粉の順で衣をつけて揚げてみてください。イカリングもいっしょに揚げると、子供たちにも好評です。