初冬の風物詩

2013年11月第4週

今週の野菜セット

左から

小春日和が続いています。だからといって油断していると、夕刻の冷気に当たって風邪をひきかねません。先週のわたしがそうでした。すこし寒いかな、と思いながらも、歩いているうちにあたたかくなるから大丈夫。そんな調子で夕方の散歩に出かけたところ、行けども行けどもあたたかくなるどころか、寒さはつのる一方。そのうち気分までわるくなってきて、早々に引き上げてきたのでした。

丸々二日、ほぼぶっ続けで眠ったおかげでようやく調子が出てきましたが、自分でも気づかないうちに免疫力が低下していたようです。年のせいもあるんでしょうか。周囲に迷惑をかけないためにも、気をつけなければ・・・と思ったしだいです。

いつのころからか、初冬になると益子の上空には熱気球が流れてきます。飛距離を計る競技らしく、色とりどりの気球が次から次と山の端から現れて、反対側の山の向こうへ流れてゆきます。中には田圃や畑に不時着するものもあり、そういうところにはすぐに車が駆けつけて、なにやら記録を残している模様。

たいていが外人のオネエチャンで、なにが面白くないのか、ものすごく無愛想なんです。気球の飛距離なんて、どうやって計るのか。気球自体にそんな装置がついているのか。こっちは気になるものだから、質問するんだけど、ギロリと睨むだけでなにも教えてくれないどころか、さっさと失せろって感じで行ってしまう。陶芸家の外人のオネエチャンたちは、初対面でもすごく友好的で感じがいいので、そのつもりでいるととんでもないことになるんですね。

何人かにトライしてみたけど、みんながみんなそんな調子なので、熱気球というのはそんなに秘密の多いスポーツなのか、あるいは敷居が高いのか。なんだかしらないけど、自分はことわりもなしに他人の田畑に踏み入ったりするくせに、競技関係者以外とは口も聞きたくないみたいなんですね。そういうオネエチャンたちの車が路上駐車していると、いやがらせにクラクションを鳴らしたりするわたしもどうかと思いますけど・・・。

でもね、そういうむかつくオネエチャンたちから距離を置いて、上空をゆっくりと流れていく色とりどりの気球を眺めていると、雑然としていた頭の中が平らになる感じがします。見慣れた山間の風景に突如、非日常的な風船玉が出現するわけですから、はっとさせられるんですね。動きがスローなところもいいし、気球が高度を下げてくるとズボーッ、ズボーッという、まるで怪獣が火を噴いているような音が間近になってきます。気球の巨大さにその呼吸音が加わると、まるでクジラが頭上を横切っているかのような感じなんです。

どこの家の犬も、その怪獣の姿と呼吸音に反応して吠えたてます。犬たちはまぎれもない生きものとして気球を捉えているんだと思います。いくら上空をかすめたところで、飛行機やヘリコプターに向かって吠える犬なんていませんものね。

そんな見慣れないものも、毎年のように出現するようになると、なんだかそれが初冬の風物詩のようになってしまう。今朝、出勤途中に気球の姿を見るなり思ったのが、ああ、もうそういう季節なのか。自分でそう思ってから、なんだか可笑しくなりました。だって、益子の上空に気球か現れるようになったのは、せいぜい二十年ぐらい前のこと。隣町の茂木の山中に大きなサーキットができて、そこを出発点にそういう競技が行われるようになってからです。つまり、二十年かそこらで風物詩のようなものはできあがってしまうんですね。そんなもの騙されない犬の感性を見ならうべきかもしれません。

今週の野菜とレシピ

寒いときにはふろふき大根がおすすめ。土鍋に昆布を敷き、輪切りした大根と水を入れてことこと煮るだけ。ほんとうのふろふきは三日かけて煮る、という話を聞いたことがありますが、わたしは半日ぐらいで、大根が透き通ってきたころにいただくのがいちばんおいしいと思います。柚子味噌でどうぞ。

柚子味噌は味噌:3、砂糖:1。酒:1の割合で小鍋に入れ、弱火で混ぜながら煮ます。柚子の皮を細切りにしたものを加えますが、これは味噌の中に入れてしまうより、あつあつ大根の上に味噌と柚子、別々に載せたほうが香りがいいようです。

残った大根は翌日、フライパンで両面じっくり焼いてステーキ風に・・・。醤油とオイスターソース少々、唐辛子少々をからめてどうぞ。これもお好みで柚子の皮を載せてどうぞ。

自然薯はひげ根をガスの火で焼いてから汚れを落とし、ふつうは皮を剥かないものですが、どうしても気になる向きはピーラーでできるだけ薄く剥いてから摺りおろしてください。