彼岸花

2013年9月第4週

今週の野菜セット

左から

秋分です。いつの間にか、草むらから彼岸花が顔をのぞかせています。裏庭の、これまでなにもなかったところも、ひとかたまり、燃えるような赤に染まっていました。

ひとかたまりといわず、あたり一帯が真っ赤になるほど群生しているところがあって、そこは毎年、この時期には他府県ナンバーの車で賑わいます。彼岸花の写真を撮りに来るのですが、今年はその土手の一部が崩壊してしまいました。台風18号の被害はさほどではなかったのですが、その前に降った大雨のほうがたいへんだったみたいです。

山間部なので畑が斜面になっているところが多く、そういうところから大量の土砂が流出しています。道路にあふれ出した土は、やがてきれいにかたづけられますが、それが畑にもどされることはなく、空き地に捨てられることになる。もったいない話ですが、農家もそれを気に病むようではないのですね。気に病むぐらいなら、はじめから表土の流失を防ぐ手立てを講じているわけですから・・・。

百年後には地球の表土が半分以下になり、農作物の収穫量が激減するというデータがあるにもかかわらず、これだけのほほんとしていられるのは、一代や二代では変化があらわれにくいからですが、気がついたときにはもう手遅れになっている。それがおそろしいと思います。オリンピックだ、リニアモーターカーだなどといってる場合じゃないんですよね。

もっともオリンピックにせよ、無理矢理リニアモーターカーを走らせるにせよ、原発を再稼働させるのが目的なんでしょうから、そんなところで百年後の食糧問題など論じたところで、だれも耳を傾けてはくれないでしょう。とにかくツケはみんな後回しにして、儲けられるうちに儲け、食べられるうちに食べておくというのがこの国のみならず、世界的な傾向みたいですからね。

その昔読んだ野坂昭如の小説に、原発を誘致した片田舎を舞台にしたものがありました。それほど売れた本ではないし、題名も忘れてしまったのですが、とにかく能登半島とおぼしきところに原発が建設される。すると補助金で潤った自治体は体育館やら保育所やら、オペラハウスみたいなものまでどんどん建てる。漁業権を放棄して、見たこともないような大金を手にした人たちも、こぞって豪邸を建て、池を作って錦鯉などを飼う。でも、思ったほど雇用は生まれないし、補助金も先細りになってきて、体育館や劇場が維持しきれなくなる。老夫婦しか住む人のいなくなった屋敷もおなじです。

そこで自治体は新たな原発を誘致するといった具合にストーリーは展開するのですが、今ならだれにでもわかりそうな道筋を昭和の最中に書いていた野坂氏はすごいと思いました。小説の終わりちかくにびっくりするようなシーンがあって、それは保育園の運動会。幼児たちがいっせいにはいはいをして、折り返し点に用意された金属製のネジかなにかを持って帰ってくるのですが、それは放射線が高くて近寄れないところに、なにも知らない赤ちゃんを差し向ける訓練で、それを両親やら爺ちゃん婆ちゃんがにこにこしながら見守っているという設定です。

いくらなんでも野坂さん、それはやりすぎでしょう、とそのときは思ったのですが、最近、やたらとそのシーンが思い出されるのです。結局、それとおなじことをやってるわけですからね。荒唐無稽が現実になっちゃってる。野坂氏もすごいけど、事実は小説より奇なりっていいますから、現実はもっとすごいことになっているのかもしれません。

今週の野菜とレシピ

益子GEFの農家はさすがです。土壌の流失は皆無。有機肥料の入っている土は腰がしっかりしているというか、いざというときの粘りがちがうみたいです。ただ、台風18号の強風にはかないませんでした。茄子は揉まれて傷になっただけでなく、花芽が飛ばされてしまったため、今週はお休み。

出荷が予定されていたきゅうりは、花芽だけでなく葉っぱまで飛ばされてしまったので、再起があやぶまれています。きゅうりは葉っぱが大きいので、煽られやすいんですね。インゲンは花芽が飛ばされただけなので、半月もすれば出荷できると思います。

そんなわけで、今週は枝豆が入りました。枝豆は背が低いので無事だったみたいです。ただ、横倒しになったので泥だらけになっていたので、水洗いしてあります。

すだちは今が旬のサンマの塩焼きに添えてくださいね。