虫の話

2013年5月第4週

今週の野菜セット

左から

先週はいきなり夏の陽気になりましたが、週末にはまたうすら寒くなりました。山の中では、ちょっと暑くなるとどこからともなくヤブ蚊がやって来て、しつこくつきまとうのですが、気温が下がると同時にいなくなります。せいせいした気分。でも、葉陰に身を潜め、ひたすら気温が上がるのを待っている姿を想像すると、ちょっとかわいそうな気もします。

ヤブ蚊が出てくるぐらいですから、クモも活動を開始したようです。今までなにもなかった山道で、かれらの巣が顔面にべっとり張りつくようになりました。これが逆光だと見えないんですね。もっとも丸見えだと、虫にも見えてしまうわけですから、ネットを張る意味がなくなってしまうんでしょうけど・・・。もっと隅のほうに巣を作ってくれれば、人に壊されることもないのですが、それでは収益が上がらないんでしょう。人が通りやすいところというのは、虫にとっても飛びやすいところだからです。

また、クモの巣がかならずといっていいほど、手足や胴体ではなく顔面につくということは、虫たちもまたわたしたちとおなじところからまわりを見ていることになる。ということは、わたしたちの目というのは絶妙な位置についていることになります。

山の中で道に迷うと、まるで道案内でもするように現れる虫がいます。虫は人によってさまざまで、蝶だったりカナブンだったり、中にはクワガタなどという豪勢な人もいますが、わたしの場合はなぜかかならずスズメバチ。スズメバチなどいるはずのない季節でも、どこからともなく救助に駆けつけてくれるのですが、かれらは例外なくわたしたちの目の高さ、視線の延長線上を飛びますものね。そして見覚えのあるところに出たとたん、幻のようにかき消えてしまうのです。

これからいろんな虫が出てきます。中には害虫呼ばれりされるものもいるでしょうけど、虫を侮ってはなりません。「蜘蛛の糸」ではないけれど、いつか、思いもかけないところでかれらに助けられるかもしれませんからね。

虫にとってはあまりありがたくない存在だとは思いますが、山間部でもようやくツバメが舞いはじめました。町中では先月あたりからいましたけどね。山間部までやって来るツバメは、遅く来て、帰るときにはひと足早いのが特徴です。だからひと夏に二度・三度と抱卵するところ、一・二回で済ませることになるんでしょう。

ということはこんな内陸部の、しかも山の中までやって来るツバメというのは、勢力の弱いグループなのかもしれません。だからドジなツバメも多いんでしょうか。雛が孵ったのはいいけれど、身体が大きくなるにつれ、重みに耐えかねて巣が落ちてしまうといった事故が起こります。そんな調子だから、ツバメが営巣をはじめると、気が気ではないんですね。

そんな気持ちが伝わったのかどうか、ガレージの梁のところで営巣しかけていたのが、途中からいなくなってしまいました。これまで二十年以上、縁先とガレージの二カ所で営巣していたツバメたちが、去年からいなくなってしまい、今年はもどって来てくれたのかとほっとしていたんですけどね。ツバメにふられるというのも、なんだか寂しいものです。

カエルの声もにぎやかになってきました。夜になると、家の中にいても聞こえるようになり、まるで耳鳴りのようにどこまでもつきまといます。でも、慣れてしまうとそれも気にならなくなり、都会からやって来た友人が耳障りで眠れない、などというのが逆に奇異に感じられるようになるんですね。

これも田圃にいる小虫にとっては、おどろおどろしい魔の合唱に聞こえているのかもしれません。でも、この合唱があるおかげで、早苗が順調に育つというわけ。

気がかりなのは、家のまわりではとっくに田植えが終わっているのに、青山さんのところではまだ田圃に水も張られていないこと。この水不足は気候のせいもありますが、農地改良などという余計なことをしたために、水路まで変更されてしまったのが一因だといいます。農地改良委員というのが、自分たちに都合のいいように水路を変えてしまったんですね。何百年も水争いの続いている土地柄なんだそうです。

そんなどろどろした話はどうでもいいから、早いところ、まとまった雨が降ってほしいものです。

今週の野菜とレシピ

今週は待望の絹さやが入ります。これも先月末の遅霜で芽をやられ、生育が危ぶましたが、なんとか持ち直してくれました。

絹さやといったら卵とじ。濃いめの出汁で煮て卵とじ、油炒めして卵とじ、お吸い物の卵とじ・・・。お好きな卵とじでどうぞ。来週にはスナップエンドウも出てきます。

春菊も出てきました。今どき春菊?と思われるかもしれませんが、露地栽培では春菊の旬は今。冬の鍋ものに使われるのはハウス栽培なんですね。

春菊は酢と相性がいいので、おひたしにも胡麻和えにも、酢を少々加えるとおいしくなります。

先週、野菜たっぷりセットの方にはキャベツが入りましたが、あれは熊田の菜園でヒヨドリに地上部を食べつくされ、根だけが残っていたもの。それが小ぶりとはいえ、ちゃんとしたキャベツに育っているのですから、植物の生命力には驚かされます。来週は青山さんの春キャベツが入ります。こちらのほうは全員に行き渡りますからね。