秋のない秋

2013年11月第3週

今週の野菜セット

左から

秋の気配が感じられるようになったと思ったら、もう初冬。紅葉を観賞している間もなく、雪かきに追われはじめた地方もあるようです。

これって、まるで漫画に出てくるキャバレーかバーみたい。きれいどころのお姉さんに誘われてテーブルにつくや、ちょっとごめんなさいね、といってトウの立ったおばさんと入れ替わる。そしてこのおばさんが冬のようにどっかりと居座ってしまうのです。

秋が鮮やかな紅葉のドレスをまとって登場したとたん、台風にもみくちゃにされ、ようやく静かになったと思ったら冬のおばさんでしょ。詐欺ですものね。そんな下世話な想像もしたくなるというものです。秋子さーん、ご指名でーす、なんちゃって・・・。

かと思うと、週末には季節が逆もどりしたかのようなあたたかさ。小春日和というより小夏日和という感じで、ここにも秋子さんの姿はなかったようです。

紅葉の進みかたも遅遅としたもので、色づきもあまりよくありません。しかしその分、今年は柿や柚子が豊作だったので、あまり贅沢はいってられないのかもしれません。それよりも、この時期には大仕事が控えていて、紅葉の如何にかかわらず、樹木が葉を落としてしまう前に、よけいなものを処分してしまわなければならないのです。

山の中に住んでいると、毎年いろんな木が生えてきて、放っておくとどんどん大きくなってしまいます。こちらで植樹したものもありますが、勝手に出てきた木というのは、自分で選んだところだからでしょうか。勢いがちがうので

す。自然に発芽してくるのは、栗、合歓、ウルシ、萩、榊、檜、桐にヤマナラシと種々雑多。それに加えて名前のわからない雑木もありますから、毎年軽トラックの荷台に載りきれないぐらいの量になります。

落葉してしまうと、それがなんの木かわからなくなりますからね。今のうちに済ませておかねばなりません。毎年そうやっていても、いつの間にか大きくなって、春先の強風や台風の度に倒れるものが出てくるのです。そういう危険がなければ、中には残しておきたいものもあるのですが、こういう木は足場のわるい斜面に生えていることが多いので、小春日和でなくとも汗だくになってしまいます。

まさに自然とのせめぎ合い。でも、見方を変えれば、いくら人が住んでいてもこれだけの木が生えてくるわけでしょう。大きくなるのも早ければ、寿命も短いものがほとんどで、こういう樹木たちは新たな森林を形成するための基礎となり、その次に出てくるのがクヌギやナラ、ケヤキといったもうすこし長持ちのする一群で、やがてそれも朽ちると最終的にはブナの林になる。

畑なども同様で、抜いても抜いても草が出てくるのは、かれらが自然界の最前線に立つ雑兵みたいなものだからで、放っておくとススキや篠竹に覆いつくされます。やがて樹木も出てきて、上記の自然界の設計図通りに最終林ができあがるという寸法。自然界は虎視眈々と、略奪されたものの奪還を図っているんですね。

ということはですよ、地球にやさしく、なんて歯の浮くようなことをいわなくても、地球環境はいつだって復元可能。それよりもあんたたち、もっと真剣に自分のことを考えたほうがいいんじゃない、といわれそうです。そう思ったら、とたんに汗がひいて、なんだかゾクゾクしてきました。

今週の野菜とレシピ

今週は青山さんのにんじん牛蒡が入ります。ひさびさのきんぴら牛蒡、あるいは大根やコンニャクも加えてけんちん汁にしてどうぞ。

ほうれん草は今週からちぢみほうれん草にグレードアップ。霜にあたるにつれ、甘みを増してゆきます。

ほうれん草と牡蠣のグラタン

おすすめはほうれん草と牡蠣のグラタン。ほうれん草は食べやすいように切ってから熱湯をかけ、しんなりさせてから軽くバター炒めして塩、胡椒。耐熱皿にほうれん草を広げ、その上に塩水でよく洗った牡蠣を生のまま並べます。生クリームをまわしかけ、粉チーズをふってからオーブンへ・・・。200度ぐらいでこんがり焼き、あつあつをお召しあがりください。