情緒とスリルの落ち葉の季節

2013年12月第1週

今週の野菜セット

左から

早いもので、もう師走。

紅葉も黄葉も色あせて、茶色の濃淡になりながら散ってゆきます。うつくしかった雑草の紅葉も、今は無味乾燥な枯れ葉色になって、こちらのほうはしつこく地面に張りついたまま・・・。生命活動を終えた後も土壌をしっかり押さえこみ、霜害や風雨による流失を防いでいます。嫌われものですが、じつは縁の下の力持ち。

積もり積もって堆肥となる落ち葉といい、冬の畑でなお青々としている野菜といい、植物の生のありかたは徹底して献身的です。おそろしく高潔な魂の持ち主なのかもしれない。そう思ったら、毎日の落ち葉さらえもあまり苦にはならなくなります。こんなに情緒のある肉体労働なんて、ほかにはちょっと考えられませんしね。

葉っぱが落ちきったところで、今度は屋根の上の落ち葉落とし。こちらのほうは情緒の代わりにスリルがあって、はじめのうちはこわごわですが、終わるころにはけっこう慣れて、鳥たちはこんな風に庭やら畑やらを見下ろしているんだな、というのがわかります。

なにも遠いところまで出かけなくても、目線を犬猫の位置まで下げたり、屋根の上まで持ち上げたりするだけで、見慣れた風景が一変します。思わぬ発見もある。たとえば庭木の枝の込み入ったところに、小鳥の巣があったり、雨樋に溜まった落ち葉の中から犬猫のドライフードが出てきたり・・・。カラスの非常食なんでしょうが、こんなところを利用していたとはね。

おだやかな日中の屋上は、屋根自体があたたまっているので、地上よりかなり温度が高く感じられます。傾斜がもうすこしなだらかだったら、ごろりと横になって昼寝でもしたいところですが、寝返りを打った拍子に転げ落ちたらたいへんなばかりか、みんなに迷惑がかかりそうなので断念。そろそろと梯子を下りて来ると、裏庭の冷気に触れたとたん、汗がひきます。南国の旅から帰ってきたような気分でした。

スズメバチの巣も、ようやく空き家になったようです。この間まで一匹だけ、巣を守っているのがいましたが、いつの間にか姿を消したところを見ると、新女王も冬眠場所を求めて飛び立ったようです。

若い女王は春になると小さな巣を作りますが、庭先に転がっている植木鉢やバケツといった、雨さえ避けられればどうでもいいようなところで、とりあえずといった感じで営巣。産卵をして、それが成虫になるまでは女王といえどもなにからなにまで単独でこなさなければならないんですね。

働きバチが一人前になると、ようやく名実ともに女王となり、仮の住居を出て、あの芸術的な巣の中に籠もることができるというわけ。産卵に専念して働きバチが増産されるにつれ、それに比例して巣も大きくなってゆきますが、全部が全部、この時期まで無事に残っているわけではありません。大スズメバチの襲撃に遭って破壊され、幼虫が餌食になることもけっこう多いみたいです。

幸運にも無傷で残された巣を、どうやって物置小屋の庇の下から取り外すか。これが目下の課題ですが、ご心配なく、一度使われた巣が利用されるということはありません。ツバメは毎年、おなじところに帰ってきますが、スズメバチは天敵の目を考慮しなければならないので、そういうわけには行かないんでしょう。

両者とも、営巣してもらえればラッキーという点ではおなじですが、ツバメが残すのは泥のかたまりと糞の山。それにくらべてスズメバチの気前のよさといったら・・・。これはなによりのクリスマス・プレゼント。わが家の御守りも兼ねて、玄関に飾らせてもらいます。来年がよい年でありますように・・・。

今週の野菜とレシピ

今週は白菜が主役ですが、名脇役の春菊が入っていません。寒さで生育が遅れているようです。でも、白菜さえあれば、たいていの鍋ものはクリアできます。柚子もいっしょに入りますので、皮に傷みのあるものは絞ってポン酢にご利用ください。

かぶはスライスして、葉っぱのきれいなところもいっしょに塩でもみ、しんなりしたら水気を切って浅漬けにします。これにオリーブオイルと柚子の汁をかけるとサラダ、醤油をかけると漬け物になりますが、いずれの場合も柚子の皮を細かく切って散らすと香りがぐんとよくなります。