今年の師走は寒さも格別

2013年12月第2週

寒くなりました。

ほぼ毎朝のように、庭先は霜で粉砂糖をふったようになり、雨水受けにもときどき薄氷が張るようになりました。だんだん布団から出るのがつらくなりますが、この寒さが冬野菜の滋味になると思うと、しかたがありません。せえの、で起き出してストーブに火を入れます。

呆れたことに、うちの犬猫が起き出して来るのは、部屋の中が十分にあたたまってから・・・。それまではわたしの抜け出した布団のぬくもりを。二匹でちゃっかり分かち合っているんです。夏の間は二匹とも、どこで寝ているんだか、さっぱり寄りつかないのに、寒くなったとたんベッドにどっかり。わたしもそのほうがあたたかくていいのですが、朝になると、ひとりで寒いところに出て行かねばならない。その孤独感がまた寒々としているんですね。

でも、そんな寒さなど、世相のうそ寒さにくらべたら甘っちょろいもんで、十年か二十年後には、ああ、あんな仕合わせな時期もあったんだなあ、と述懐することになるのかもしれません。

為政者たちはいったいこの国をどうしようとしているんでしょう。このお腹の底にどーんと居座るような底冷えにくらべたら、冬の朝の寒さなど陽光に輝いて、神々しいぐらいに思えてきます。年が明けたら、集団自衛権なども変わり、憲法にも触手を伸ばしてくるのかも。アベノミクスの三本の矢とは、特定秘密保護法に続くこれらのことだったんですね。

でも、2030年までに原発を撤廃させるという、前政権の作った法律がいとも簡単に覆されたところを見ると、これもまた次期政権によって無効になる可能性がないとはいえません。ただ、それだけ力のある野党が存在するかというのが、頭の痛いところではあるのですが・・・。

原発事故のときには、まだわたしたちに笑える力が残っていました。もちろん精神的にも、経済的にも大きな打撃を受けていましたが、それでも腹を立ててもしかたがない、泣いていてもはじまらない、というのでしかたなくですが、えへらえへらと笑っていることができたのです。

が、今回はそれもできない雰囲気で、みんな暗く押し黙っているだけ。ここまで民意が無視されてしまうようでは、どうしようもありませんものね。

これがほんとうに民主主義国家なのかと、ついわたしたちは考えてしまうのですが、よく考えてみたら民主主義というのはプロレタリア独裁という言葉同様、絵に描いた餅のようなものなのかもしれません。理想的ではあるけれども実現は不可能にちかく、結局、一部の有力者の思うままになってしまう・・・。

どこの国を見てもわかるように、政府の意思と一般大衆の希望や思惑は、かならずとも一致しないし、正反対になることもめずらしいことではありません。だから冷戦時代には、ソビエトは嫌いだけどロシア人はいい人だといわれ、今は中国は嫌いだけど、自分が接した中国人はいい人ばかり、ということになる。これは不思議でもなんでもないんですね。

ただ、日本人のひとりとしてわたしが思うのは、たとえば国外に出たときに自分が日本人であることに引け目を感じたくはないということ。また、国外にいる友人が来たときに、あれやこれや批判をかわすのに無駄な努力をしたくない。日本人としての誇りというのは、もちろん経済力などではないし、世界遺産がいくつあるとか、オリンピックを何回開催したかとか、そういうこととも関係ないのですから・・・。要はわたしたちがどれだけ自由であるかということで、それ以上に次世代に負担を残さないということ。

そういう意味では、この国のみならず、世界全体がどんどん貧相になっていくようが気がしますよね。

今週の野菜とレシピ

今週は大根にんじん牛蒡里芋と、けんちん汁もしくは豚汁の材料が揃いました。コンニャクと豆腐を買い足してください。

材料はすべてひと口大に切りそろえ、まずコンニャクをから煎りします。油を足して、ニンジン、牛蒡と炒めてゆきますが、豚汁の場合はここで豚肉も炒めてください。野菜は一度に入れるのではなく、一種類ずつ炒めます。そうすることでそれぞれ野菜の持ち味が生かされます。

最後に銀杏切りにした大根を加えて炒め、水または出汁をたっぷり加え、煮立ってきたら里芋も加えます。味つけは味噌でも醤油でも、お好みで・・・。わが家では一日目は根菜たっぷりのスープとして味わって、二日目に豆腐と葱を加えます。三日目には小松菜を加えたりして、大鍋を何日にもわたっていただきますが、こういうものがあると年末の慌ただしいときに重宝します。

ニンジンの葉は竹輪といっしょにかき揚げにすると、竹輪がもちもちした食感になって美味なのでお試しください。


野菜たっぷりセットの方には百合根が入ります。うちの近所で作っているのですが、毎年イノシシにやられてしまうのに、今年はこんなに立派なのができたといって持ってきてくれました。

スーパーや八百屋の店先で見かけるお上品な百合根とは、似ても似つかぬ無骨な姿形ですが、甘みも滋味もこちらのほうが勝っています。百合根というと、茶碗蒸しなどに少量入っていたりするものですが、わが家ではだれかが風邪をひくと、みんなでこれをたっぷりいただきます。

まず、昆布と鰹節で濃いめの出汁を用意しておきます。百合根をほぐして汚れを取り、大きめのものは半分にしてから湯がきます。すぐに火が通りますから、その間に塩と醤油でお吸い物よりすこし濃いめに出汁を調味。葛があれば理想的ですが、なければ片栗粉でとろみをつけておきます。

茹であがった百合根を椀の中に分け、あつあつの出汁を注いで柚子の皮を一片添えたらできあがり。あつあつをふうふういいながらスプーンでどうぞ。