夏といったら怪談

2013年7月第4週

今週の野菜セット

左から

暑さが一段落したようです。あの猛烈な暑さの後では、少々の暑さもしのぎやすく感じらるものですね。朝夕の風は肌寒いぐらいです。

夕刻、シャワーのように降りそそぐカナカナの羽音の下を歩いていると、涼しさもさることながら、散文的な日常から乖離して別世界に足を踏み入れそうな感じがします。林の中は暗くなるのも早いので、歩き慣れているはずの山道が不意に見知らぬところに見えたりして、にわかに心細くなったりする。逢魔が時とは、こういう時間帯のことをいったんでしょうね。

犬がいるからいいようなものの、こういう地に足のついた生きものがいっしょでなかったら、ふらふらと異空間に迷いこんでしまいそうな雰囲気があります。実際、このあたりではときどきそういうことが起こってるんですよ。

夏につきものの怪談というほどおどろどろしくはありませんが、そんな奇妙な話をいくつか・・・。

裏山の中腹に西明寺という真言密教のお寺があります。西明寺というのは空海が唐に渡ったとき滞在していた寺院の名前で、祇園精舎を模したといわれる唐の西明寺とはくらべものにならないくらい小さな寺院ですが、弘法大師に関係していることはまちがいありません。

日光を開山した勝道上人を表敬訪問した際、空海が益子に立ち寄ったことがあるそうで、お寺の裏手には空海が杖をたてたところから湧きだしたという、無尽の泉があるほか、そのとき入念に巡らされていた結界が、裏山を縦断する自動車道路ができたとき、寸断されたという話もあります。そんなことがあってかどうか、このあたりではときどき不思議なことが起こるんですね。

その自動車道路の入り口付近に住んでいる人とは、犬同士が仲良しなのでよくいっしょに散歩をするのですが、正月に彼女の弟が遊びに来たとき、ちょっと西明寺まで初詣に行ってくると車で出かけたきり、なかなか帰って来ないし、携帯電話も通じない。お昼になっても帰ってこないので、家族がそわそわしはじめたころ、ようやく帰ってきたので訪ねたら、まっすぐ西明寺に行ってすぐに帰ってきただけという返事。車で往復一時間もかからないような距離なのに、四時間以上も経っていたのに、当の本人がいちばん驚いていたそうです。

時間が歪むぐらいですから、当然、空間も歪みます。これはわたし自身が経験したことですが、山歩きをしている最中、めずらしい花を見つけたので摘んでいたら、同行していた友人の姿が見えなくなり、おーいと叫んだら、先に行っていたはずの友人がおーいと背後から現れたこと。両側が藪になった痩せ尾根の一本道で起こったことです。

息子は高校時代、帰宅するときに前後の友人と話しながら自転車をこいでいたのですが、そこへ大きなトラックが猛スピードで走ってきて話が中断。トラックが走り去って話の続きをしようと思ったら、前後にいた友人が自転車ごと入れ替わっていたんだとか。このときもパニックになったそうです。

そういえばアラレちゃんも、はじめて家に遊びに来たとき、帰り道に不思議な経験をしています。この坂道を降りたら左に曲がって、後は丁字路にぶつかるまでまっすぐ五キロほどの道。アラレちゃんは方向音痴なのでアテになりませんが、そのときの運転手は彼女のお姉さんなので安心していていました。ところがまっすぐ五キロほどの道の途中で、ハンドルを切ったわけでもないのに急に道が細く、未舗装の坂道になり、下るにつれ、どんどんあたりが暗くなってゆく・・・。

来るとき、こんな道は通らなかったよね。ようやく切り返しができる空間を見つけて、元の道路にもどれたそうですが、その道は右側が田圃や畑、左側には山が迫っていて、そんな谷底に降りて行くような坂道などあるはずがないのです。時あたかも逢魔が時。ぽっかりと異空間が口を開けてでもいたんでしょうか。

もうひとつ、これは正真正銘の怪談です。娘が焼きものをはじめたばかりのころ、いっしょに窯業指導書に通っていた男友達が、なにを思ったか、夜中に西明寺の境内に入ったのだとか。失恋でもしたんでしょうか。ひとりになりたくてそんな所に来たんでしょうが、さすがに寂しすぎたのか、それともこわくなったのか、友達に電話をかけまくったそうです。

娘のところにもかかってきたけど、背後の喧噪がうるさくてなかなか声が聞き取れない。カラオケボックスにでもいるのかと思ったそうです。ほかにかけた電話もおなじだったようで、みんなにカラオケでもやってるの?と聞かれ、いや、西明寺なんだけど、と応えると相手が絶句。あるいは、なにやってるんだと騒ぎだすので、さすがに怖くなって帰ってきたそうです。

この青年は他所から来たので知らなかったようですが、この山には地縛霊がうようよしているというのが、地元では常識になっているみたい。だから、たまたまその夜は集会でもあったんでしょうか。それにしても、よく無事に帰ってこれたものです。これも結界が寸断されたせいなのかどうか・・・。

わが家でも家族が集まったときや、友人が訪ねて来たときなど、写真を撮るとよく奇妙なものが写りこみます。山の中でめずらしい花やキノコを見つけると、カメラを向けていたのですが、そういうところにも正体不明のものが入ってしまうので、カメラを持ち歩くこともなくなりました。

こういう話、荒唐無稽といわれそうなのであまりしないようにしているのですが、ま、季節も季節ですから、大目に見てくださいね。

今週の野菜とレシピ

ぼっちゃんカボチャが出てきました。少人数の家族にはうれしいサイズ。てんぷらにして、残りは煮物でどうぞ。

茄子は乱切りにして素揚げ。あつあつのところにおろし生姜をたっぷりかけて、醤油をかけるとご飯がよく進みます。残りものには、スライスした玉葱を混ぜ、冷蔵しておくと翌日にはサラダとして楽しめます。プチトマトを輪切りにして添えると彩りもきれいですよ。

モロヘイアはさっと湯がいてから、おひたしにするより細かくして麺つゆに加え、ワサビも添えてお蕎麦のつけ汁にしてみてください。ぞぞぞ蕎麦と称して、お昼によく食べています。食欲がないときでも、勢いで食べてしまうんですよ。

今週、ピーマンはお休み。まだ実つきがほんとうではないそうです。枝豆もふくらみが不十分なので、来週に持ち越されることになりました。申しわけありません。