幸福の素

2013年4月第2週

今週の野菜セット

左から

二週連続で週末は大荒れ。一度は持ちこたえた桜も、とうとう散ってしまいました。台風並の風雨ですものね。花に嵐とはいうものの、こうまで荒天が続くのも珍しいのではないでしょうか。

年々、気候がすさんでいくのと、人の気持ちがすさんでいくのがリンクしているように感じられていたのですが、新大久保のコリアンタウンで繰り広げられているデモなどを見ると、気のせいでもなんでもなかったようです。韓国人は出て行けとか、ガス室に送れだとか、唖然とするような言葉が白昼堂々と叫ばれているのです。恥部がさらけ出され、悪臭を放つ膿がたれ流されているとしか思えません。

おなじようなことが世界中で起こっています。移民いじめにロマの排斥、そしてイスラム教徒に対するいわれのない白眼視などなど・・・。これじゃ天候も荒れるわけで、そのうち耐えきれなくなって、あちこちで火山噴火もはじまるんじゃないか。そんな不安が頭をもたげる、重苦しい春。こんな春を待ち望んでいたわけではないんですけどね。

話は変わってこの春、アラレちゃんのところにまた猫の居候が増えました。道路で猫が轢かれたりしていると、かならず近所の人が「お宅の猫ではないか」と通報してくるそうで、彼女の猫ではなくても、もらい受けて庭先に埋葬しているのですが、今回は車に轢かれて半身不随になっている猫。彼女の飼い猫ではないけれど、見るに見かねてこれも引き受けてきたそうです。

下半身が不随で動くこともままならないので、安楽死させるために獣医のところへ行ったのですが、その獣医のところにも後ろ脚が動かせない猫がいて、けっこうなスピードで床を這いずりまわっていたのだとか。それを見たら、安楽死などとはいえなくなって、十日間の入院の後、帰ってきました。

下半身が麻痺しているので、一日に三回、おしっこを絞ってやらなくてはなりません。おしっこを絞るといっても、素人にはなかなか腎臓の位置もわからないし、下手なところを圧迫すると猫が怒ります。しかも一日一回、脚の筋肉を萎えさせないため、身体をささえて立たせてやらなくてはならない。ほかにも猫が五匹、犬が三匹いる状況で、ああ、もうどうしよう、と嘆くことしきりでした。

ところが一週間も経つと、たしかに手はかかる。食事も特別療養食だからお金がかかるし、いいことはないもないのに、なんだかオジサンがいちばん可愛くなってきたというんですね。その猫、オジサンという名前になったんです。マイナス要素が多いほど可愛くなるというのは、一見不思議なようですが、わたしもよくわかると思いました。

昔、フィラリア末期で捨てられていたハスキー犬の面倒を見ていたことがあり、この欄にも登場したことがあるので憶えている方もいらっしゃるかもしれませんが、毎週、獣医のところへ腹水を抜きに行かなければならない。食欲がほとんどないので、牛肉の赤身しか口にできない。ハスキー犬は寒さに強いはずなのに、腹水に体温を奪われるため、暖房を入れた室内に置いてやらなくてはいけないなど、傍目にはたいへんなことばかりですが、当事者は不思議と癒やされ、多幸感があったものです。

わたしの友人で老犬の介護をしている人がいますが、これも傍目にはたいへんそうですが、本人は手がかかればかかるほど可愛くなるみたいなんですね。白内障で目は見えない。耳も聞こえない。そのうえ歩くこともままならなくなって、そんな不憫な状態では安楽死させたほうがいいんじゃないか、と彼女もはじめは思ったそうです。でも、まだ食欲があるということは生きる意思があるということ。朝、起きてくると部屋の中におしっこやうんこが散乱しているのも、最初は苦痛だったけど、今ではそれも生きている証と、いとおしく感じられるのだといいます。

それでアラレちゃんとも話したのですが、世の中にはそういうマイナス要素を忌み嫌う風潮があるけれど、そういうものを排除することで失われるものも大きいのではないか。病気になった犬猫を捨てたり、廃猫・廃犬として愛護センターに持ちこんだりする人は、自分の人生を捨てているようなものかもしれないって・・・。最近、話題になっている出産前の検査など、効率のために幸福を捨てる最たるもの。愚の骨頂といえるでしょう。

弱者を切り捨てるような世の中には、天が怒って嵐が吹き荒れる。天災は人災という風に捉えれば、この国には当分災害が続くのかもしれません。

今週の野菜とレシピ

今週は愛媛からのお助け便、春キャベツが入りした。これはもう、レシピなど不要ですね。

牛蒡も先週いっぱいのはずだったのですが、もう一週賄えそうです。今週はうんと細く切って、熱湯にあててからサラダにしてみましょうか。マヨネーズ+醤油+摺り胡麻のソースがおすすめです。

間引き大根は菜飯用。さっと湯がいてから細かく切って、塩をふります。ぎゅっと絞って水気を切って、煎り胡麻といっしょにご飯にまぜてどうぞ。春は菜飯がおいしいので、わが家では小松菜京菜でもこれをやります。天気のいい日には、それをお握りにして戸外で食べると茶碗でいただくよりも食が進みますよ。

ほうれん草が巨大化して商品にはならなくなっています。したがって、これはおまけ。

キャベツは来週も入ります。青山さんの春キャベツも今、ようやく幼児のてのひらぐらいになり、これから結球しはじめます。もうしばらくお待ちくださいね。