タンポポの綿毛

2013年5月第1週

今週の野菜セット

左から

肌寒い日が続いていたかと思うと、雷鳴が轟いて雹が降るという、千変万化の春でした。

そんな調子ですから、例年なら田圃に水が入ると、待ってましたとばかりに鳴きはじめるカエルもしんとして、「沈黙の春」というこわい言葉が思い出されたぐらいです。ようやく週末あたりから、カエルたちのラブコールもはじまって、ほっとひと安心。うるさいなあ、という日常がもどってきました。

もう五月ですものね。寒風に震えていた新緑も、気持ちよさそうに陽光を浴び、薫風に身をゆだねているようで、樹下にいるわたしたちの歩調も軽くなります。このまま気候が安定してほしいものですね。

目にしみるような新緑、という表現がありますが、新緑ってほんとうにいろんなものに染みるんですよ。たとえば白いシャツを着て写真を撮ると、それが淡い緑色に染まこのっているのがわかります。昔、山羊を連れて歩いているときなど、体毛に葉緑素が染みついているかのように見えたものですが、新緑のトンネルの下ではそういう不思議なことが起こるんですね。

おなじ樹下でも、葉色が濃くなるとそういうことは起こらない。新緑の時期だけの現象ですが、ほんとうにこのときには、葉緑素が空気中に発散されているのかもしれません。だとしたら、わたしたちの皮膚にもそれは浸透しているはずで、新緑の心地よさというのは、視覚的な問題だけではなかったことになります。

せっかくの連休です。人混みの中に出かけるよりも、森林浴のほうがおすすめ。花粉症も下火になってきたようですから、生まれたての酸素と葉緑素を吸収して、心身をリフレッシュしてください。ただし、今は紫外線がいちばん強いときですから、そちらのほうの対策も忘れないでくださいね。

道ばたではタンポポが花から綿毛になっています。この綿毛の球形は間近で見ると、内側に宇宙が凝縮されているかのような広がりを感じさせて、飽きることがありません。でも、持ち帰ってもすぐに茎がしおれてしまいますし、その前に綿毛が飛び散ってしまうこともあり、楽しみを長引かせることができないのが難点でした。

益子の町中は今、陶器市で賑わっていますが、その中で友人の陶芸家が綿毛の内側に小さな電球を入れたら、かわいらしいランプを売っていました。彼は伝統工芸師に認定されているほどの作家ですが、そんな人でもなかなか作品が売れない世の中です。それで考案したのがタンポポのランプで、暗くした室内で点灯すると幻想的な雰囲気を醸し出すんですね。

よほど手先が器用でないとそんな芸当はできない、と思っていたら、いや、綿毛を保存するだけだったら簡単だよ、といってやり方を教えてくれました。透明のラッカーをすこし離れたところから綿毛に吹きつけるだけ。近づきすぎると形が崩れてしまいますから、三十センチぐらい離すのがコツ。固まったところで茎を切り取り、園芸用の針金に木工用ボンドで固定するとのこと。盆栽用の針金を使うといい、とのことでした。

さっそくラッカーと針金を買ってきて、試作してみました。六個の綿毛が変幻自在な針金に支えられた現代アートがいとも簡単に完成。と思ったら、遊びに来た孫が持ち帰ってしまったので、また今日も作るつもりです。子供は綿毛が好きですものね。

綿毛に対する思い入れは大人になっても変わりません。その証拠に、この綿毛の固定法で特許を取ってしまった人がいるんだそうです。でも、こんな簡単なことで特許を取るというのも考えものでしょう。心が狭すぎるんじゃないでしょうか。そんなわけで、あんまり人には教えないほうがいい、といわれたのですが、みんなに触れまわっています。ぜひ、作ってみてくださいね。

今週の野菜とレシピ

今週はたけのこが入ります。その日のうちに添付の米ぬか・唐辛子といっしょに湯がき、そのまま冷ましてください。冷めたらきれいな水に移します。毎日水を替えると、数日は常温で保管できますので、たけのこご飯や煮物など、日替わりでお楽しみください。

先週、たけのこをお送りした方にはトマトが入ります。仁平博さんは青山さんの同級生。今でも数人の同級生が月に一度、集まって食事をするそうですが、みんな下戸なので、最後はかならずチョコレートパフェになるんだとか。いい年をした男がそろいもそろって、そんなものを食べている光景はほほえましいというか、滑稽というか・・・。からかい半分、「パフェの会」と名づけているのですが、そのメンバーのひとりが仁平さんです。

トマトは花がつきはじめると蜂に交配させるため、農薬散布はできませんが、苗の時期には消毒散布をしています。

チンゲン菜はさっと湯がいて、熱いうちにバターをからめ、醤油で召しあがってみてください。オリーブ油をたっぷりかけても美味ですが、これには塩のほうが合うみたいです。

北海道の玉葱は今回が最終便。次回からは新玉葱になります。