春の鳥

2014年3月第2週

今週の野菜セット

左から

寒い日が続いていますが、今週の半ばあたり、またあたたかくなりそうです。正直なもので、雨水受けに氷が張るような日には、モグラも地中でしんとしているらしいのですが、ちょっと気温がぬるむと動きはじまます。地中から掘り出された土の山が大きくなり、それと同時にトンビが上空を舞いはじめます。トンビは土の山が動くのを見つけると、急降下して下にいるモグラを捕らえるのですが、あんなに啼いていたら警戒されるのではないかと、他人事ながら気にかかります。

それはともかく、トンビの声が頭上に響き渡るようになったら春。山間ではウグイスよりひと足はやくやって来る春告鳥です。

このあたりでも梅が満開になってきましたから、あたたかいところではもうウグイスが啼きはじめているんでしょうね。

渡りの途中、かならず立ち寄ってくれるヒタキの姿も見えなくなって、騒々しいヒヨドリの声だけが響き渡っていましたが、トンビの声とともにそれも下火になりました。トンビは一年中いるのですが、冬の間は静かに舞っているだけ。春を目前にしてしきりに啼きはじめるのです。

ヒヨドリはそれに恐れをなしたのか、あるいは畑に残っていたキャベツも、新芽を出していた油菜もきれいに食べつくしたので、新天地を求めて行ったのかわかりませんけど・・・。ともあれ、あのギャアギャアと賑やかな声が聞こえなくなるとほっとします。カラスもまあ賑やかといえば賑やかですが、ヒヨドリのような実害はありませんものね。

カラスも春が近くなると、つがいの姿が目立ってきます。カラスは一夫一婦制で、しかも相手は一生変わりませんから、いつもつがいでいるのですが、今目立っているのは去年の雛たちで、秋から冬にかけて群れていたのが、次々と結婚相手を見つけて集団から抜け出したカップル。樹上でも電信柱の上でも寄り添って、スキンシップならぬウェザーシップをしています。雨の中でもぴったりと身を寄せ合っているつがいたちを見ていると、凍るような寒さが一瞬遠のいて、ほのぼのとしたあたたかさが灯るようです。

フクロウはひと足はやく抱卵がはじまっています。オスとメスが啼き交わしているのでしょうか、日が落ちてから薪を取りに外に出ると、二方向からホロスケホーが聞こえてきて、これも一瞬、戸外の寒さを忘れさせます。

こうしてみると、冬には冬のあたたかさがあるのですが、やっぱりほんもののあたたかさが待ち遠しいですね。

啓蟄を過ぎ、虫やカエルがうごめきはじめると、それと同時に植物も動きはじめるようです。ここでも低周波の波動が目覚まし時計になるんでしょうか。水仙が群生しているあたりの土が持ち上げられ、乳歯のような芽の先端が覗いているところもあります。困ったことに、そんなところを選んで猫が寝そべる。ほかにも日だまりはいっぱいあるのに、動きはじめた花芽の上でごろごろと転がったりするんです。

植物にも体温がある、というのはわかっていても、わたしたちは自分の体温より低い温度はみんな冷たいとしか感じられません。先日の積雪のとき、樹木や野菜の周囲から雪解けがはじまるのを見て、あらためてそれが証明されたのですが、やはり実感するのはむずかしいようです。

だから雪の後でも、野菜の収穫はそれほどむずかしいことではないんですね。一面雪に覆われた畑の中で、ほうれん草や小松菜のまわりだけが黒々としているからです。まるで採ってくださいといわんばかりに顔を出しているんです。山の中でも、樹木のまわりから地面が露わになりはじめます。その体温を実感しようと、手袋を脱いで残雪と木の幹に交互にてのひらを当ててみますが、悲しいかな、さっぱりわからない。やればやるほど、わけがわからなくなるしまつ。樹幹に陽があたっていればあたたかいのですが、それは樹木そのものの温度ではありませんものね。

でも、猫にはそれがわかるみたい。困ったことではありますが、あっちでごろごろ、こっちでごろごろするのを見ながら、地中の動きを判断しているしだいです。

今週の野菜とレシピ

ようやく青山さんの赤かぶが出てきました。中央部が雪で潰されたビニールハウスは、竹で補強して、とりあえず人が動きまわれるようになったそうです。これはスライスして、茎や葉っぱもいっしょに刻んで塩漬けにしてください。重しをしてひと晩置くのが理想的ですが、塩を多めにすればすぐにしんなりしますから、軽く水洗いしてからどうぞ。ぎゅっと絞って水気を切って、醤油を少量かけるとご飯がいくらでも進みます。

ニラは3センチぐらいに切って、さっと湯がいてから醤油と胡麻油で和えてみてください。ニラの甘さが堪能できますよ。

八つ頭は正月料理のように、濃いめの出汁で煮染めにてどうぞ。里芋とちがってほくほくした食感で、煮汁にもとろみが出ないので炊き合わせにも向いています。魚介のすり身や椎茸を加えてもおいしいですよ。