猫の長老
2014年7月第5週

左から
- 枝豆
- ナス
- ミョウガ
- プチトマト
- ピーマン
- モロヘイヤ
梅雨が明けたと思ったら、情け容赦のない猛暑。しかも湿度は梅雨が明けてもあまり変わりませんから、身体にこたえます。まるで蒸し風呂で暮らしているようですものね。
この暑さに身体が慣れるまで、もうすこし時間がかかりそう・・・。雨水受けにしている大瓶の中の金魚でさえ、精彩を欠いているようですから、犬猫のように毛皮に包まれているものは大変です。すこしでも涼しいところを見つけているようですが、まるでゴムでできているかのように伸びています。思えば、鉄道の線路だって何センチも伸びるんですものね。わたしたちもアコーデイオンのように伸縮自在になりたいものです。
この事務所にも見るからに暑苦しい、生きも絶え絶えの生きものがいます。ぼろ雑巾のようになっていますが、これまでに何度かここにも登場したことのある、アメリカン・ショートヘアのダイちゃんです。今ではジイさんと呼ばれていて、本人も自覚しているのか、アラレちゃんが台所のほうで「ジイさん」と呼ぶと、椅子から転げ落ちるようにして飛んで行きます。
骨と皮みたいになって、毛も脱け落ちて、かつての面影はかけらもありませんが、食欲だけはあるんです。歯もダメになっているので、やわらかいものしか食べられませんが、食べる量はいっこうに落ちる気配がない。その栄養分はどこに行ってるんだと思うんですけどね。
この夏が越せるだろうか、とアラレちゃんとふたり、顔を見合わせますが、深刻さはみじんもありません。なぜなら去年も一昨年も、この調子じゃ夏は越せないだろう、といっていたにもかかわらず、秋を迎えてますます食欲旺盛になっていたのですから・・・。
ときどき一週間ほど姿を見せなくなるときがあり、いよいよかと思ってトイレなどを片付けはじめると、ふらりともどって来る。今では不死身のダイちゃんとも呼ばれていますが、こんなオス猫ばかりがうようよしている界隈で、よぼよぼのジイさんが生きていられること自体、奇跡のようなことなんですね。ふつうなら追われるか、攻撃された傷を悪化させて、とっくに亡くなっているはずです。
このジイさんのすごいところは、よぼよぼになっても若いオスたちから一目置かれていること。それもそのはず、ここらにいる野良猫はみんな、このジイさんに育てられたようなものなんです。身寄りのない子猫がいると、連れてきてご飯を食べさせる。中には当然、自分の子供もいるのですが、大半は人間に捨てられた迷い猫。ふらりと迷いこんだ成猫に対しても、自分の餌場を譲ってやります。ご飯を提供しているのはアラレちゃんなのですが、猫にしてみればジイさんのおごりということになる。命の恩人というわけなんですね。
成長してからも、力のないオス猫はジイさんの傍を離れない。ジイさんといっしょにいるかぎり、ほかのオスから攻撃されることがないからです。そんな事情があるから、このあたりはオス猫だらけになるのですが、ジイさんがいるかぎり、闘争に明け暮れるような事態にはならないんですね。政界に送りこみたいような猫。猫にしておくのがもったいないぐらいです。
最近では新参者の黄トラが、日に一回はやって来てジイさんを呼んでいます。目つきのわるいオス猫ですが、顔つきからは想像もできないようなかわいい声を出すんです。子猫が庇護を求めるような声に反応して、ジイさんがむっくりと身を起こして台所のほうへ行く。これは黄トラがご飯を食べるので、ほかの猫に邪魔されないよう、ジイさんに付き添ってくれといっているのです。
今、ジイさんが死んでしまったら、この黄トラはまちがいなくここでは生きて行けなくなるでしょうね。わたしたちにとって、ときには迷惑なジイさんも、猫の社会ではよぼよぼであろうが、ぼろぼろであろうが関係なく「重鎮」なのです。ジイさんなどと呼んでは失礼なのかもしれない。今後は「長老」にでもするか、と話し合っているところです。
今週の野菜とレシピ
今週も枝豆が入ります。去年、
枝豆
の出来があまりよくなかったので、今年は好子さん、やたらと枝豆に力を入れているみたいです。あとは夏の定番。
プチトマト
にオクラ
、茄子
、ピーマン
にモロヘイア
。こういう暑いときこそ、味噌汁で滋養をつけておきたいもの。茄子とミョウガ、あるいは豆腐とミョウガ。ミョウガがあると、一見暑苦しい味噌汁にも涼味が加わります。
ミョウガ
は収穫できた分だけお分けしていますが、全員に行き渡るといいですね。