渡り鳥

2014年11月第3週

今週の野菜セット

左から

ようやくうっすらと霜が下りました。朝夕の冷えこみもそれらしくなってきましたが、日中はともすれば汗ばむような陽気になります。それでも待ってましたとばかり、木々の紅葉が一気に加速されました。

中でも目につくのがイチョウで、ついこの間まで中途半端に色づきかけていたのが、ある日突然、燃えるような黄色になっています。まるで歌舞伎の早変わりのような鮮やかさ。イチョウというのは、しだいに紅葉を深めていく樹木たちとちがって、変身するぞ、と決めたら一日で下から上へ、炎が立ち上がるように黄葉するといいます。その瞬間を目撃してみたいものですが、それにはきっと動物写真家のような忍耐が求められるんでしょうね。

山の中ではハゼやウルシの赤と張り合うように、ハート型の葉をイチョウに劣らぬ黄色に染めた自然薯の蔓があちこちに巻きついています。こんなに目立っていいんだろうかと思いますが、地中の芋が育つころには葉っぱは落ちてしまっているので、結局わからなくなってしまいます。親切なんだか意地がわるいのかよくわかりませんが、この黄色が暮れかかった林の中では道しるべになってくれます。紅葉はどんなに鮮やかでも、暗がりでは沈んでしまって目立ちませんからね。

しかし、廊下の隅ではカラスウリ3個がおよそ10ワットの灯り。秋が深まるにつれ、そんな灯りにも体温があるかのような温もりが感じられるようになるものです。ちいさな暖房をあちこちに配備して冬じたく。先週からストーブにも火が入りました。

稲刈りの終わった田圃では、カラスたちの落ち穂拾いが終わると残った稲わらに火が放たれ、もうもうと白い煙が立ちこめます。それが一段落して地表が煤けたように黒くなると、寄りつくものがいなくなる。ところがそこにトラクターが登場してくると、にわかに田圃が活気づくんです。

カラスばかりか渡りを目前にしたサギたちが、ぞろぞろと機械の後をついて回る。中にはトラクターのツメに当たりそうなほど接近するのもいて、見ているほうがはらはらさせられますが、それほど魅力的なご馳走があるというわけ。それがカエルなんですね。冬眠に入ったばかりのカエルはまだそれほど深くは潜っていないので、簡単に地中から放り出されてしまうのです。

カエルたちは寝ぼけ眼のまま、サギやカラスのお腹の中へ・・・。かわいそうみたいですが、これがなかったらサギもカラスも冬が越せなかったり、渡りの途中で脱落したりするのかもしれません。そんなのっぴきならない事情があるにもかかわらず、かれらがトラクターについて回る姿はユーモラスで、当の運転手にしても、餌が目当てとわかっていても、まるで自分が慕われているようでわるい気はしないそうです。

このあたりの池や沼にも、ぼちぼちと渡りのカモの姿がみられるようになりましたが、これも例年よりのんびりしている感じです。カモたちがやって来ると、どこからともなく一羽のアヒルが出現していっしょに暮らす。そんな池が益子にあるのですが、今年も丸々肥えた真っ白なアヒルが登場し、まだ数羽しかいないカモたちと行動をともにしています。どこかで飼われているアヒルなんでしょうが、冬の間は自由にさせてもらっているんでしょう。今はまだ数えるほどですが、本格的な寒さを迎えるころには池のまわりがカモだらけになります。かれらは禁猟区をよく知ってますからね。

かわいそうなのは春。カモたちが飛び立った後にアヒルだけ、ぽつんと残されるのですが、冬の間たっぷりと運動するせいか、すこしスリムになった後ろ姿に哀愁と孤独感がにじみます。飼い主が迎えに来るのか、とぼとぼと自分で歩いて帰るのか、数日後にはいなくなっているんですけどね。

ともあれ、これからやって来る寒い季節がアヒルにとってはこの世の春。わたしたちにとってはありがたくない季節でも、やっぱり冬は冬らしくあってほしいものです。

今週の野菜とレシピ

今週は待望のにんじん牛蒡が入りました。にんじんと牛蒡を合わせてきんぴら、かき揚げ、もしくはサラダでさわやかな甘みと香りをお楽しみください。

青首大根もこの大きさになればおでん、ふろふき、ぶり大根となんでもOK。大根と蒟蒻を昆布出汁で一日中ことこと煮て、それを柚子味噌でいただくというシンプルなふろふき田楽。こういうのもたまにはおいしいですよ。

ほうれん草小松菜も、霜が下りたおかげで甘みを増し、おいしくなっていると思います。どちらもシンプルなお浸しでどうぞ。