秋の虫

2014年9月第1週

今週の野菜セット

左から

お盆明けに猛暑がぶり返したと思ったら、先週は梅雨寒のような一週間でした。春先の三寒四温にたいして、これは三暑四涼とでもいうんでしょうか。こんな風に気温の上下が激しいときは、体調を崩しやすいもの。そろそろ夏バテも出てくるころですから、お身体を大事にしてくださいね。

昼間はツクツクボウシ、夕刻にはヒグラシの羽音。そして日が暮れると秋の虫がにぎやかになってきました。とはいえ、今年は虫の姿がすくないようです。毎年、夏になると薪小屋のあたりが蝉の抜け殻だらけになるのに、今年はそれもほんのすこし。また、八月に入るとかならず一匹ぐらいは、あの宝石みたいな玉虫の姿を見かけるのに、今年はそんな出会いもありません。

薪小屋の中に入ると、プチプチというかすかな音が四方八方から聞こえてきます。これはカミキリの幼虫は薪の中に入りこんで、それを食している音なのですが、その成虫の姿もそういえば見かけない。夜になるとよく網戸に止まっていて、室内から網戸越しにそっと腹部に触れると、ジイジイと鳴くのがなんともいえずチャーミングなのですが、そういうささやかな幸福もこの夏はなかったわけです。

そういえばカマキリもカメムシもトンボもすくなく、今年は例年になく雨が多かったので、幼虫のうちに死んでしまうものが多かったのかもしれません。その割には蚊やブヨは多いんですけどね。スズメバチもいないので、アブは好き勝手に飛びまわっています。

去年、あんなに立派は巣を残してくれたスズメバチ。今年も来てくれますように、と、かれらの好物の実をつけるヤブカラシがはびこるのを、我慢して刈り取らずにいたにもかかわらず、軒下にはなにもないのです。おかげでうっとうしいアブにまつわりつかれ、畑仕事で両手がふさがっていると刺されてしまう。アブに刺されるとそこがしこりになって、いつまでも痒いんですね。蚊には効果があるリンゴ酢も、アブにはあまり効き目がないみたいです。

しかもうちの近所に乳牛を飼っている農家があるので、アブも特大の牛アブというやつ。緑色の目をぎらぎらさせたどう猛なやつですが、スズメバチがいるところには怖くて近寄れない小心者。そのくせ無防備な哺乳類には情け容赦ないのです。エルネスト・チェ・ゲバラが喘息持ちにもかかわらず、つねに葉巻を携えていたのはアブ除けのためだったという話をなにかで読んで、ここもキューバやボリビアの山中とおなじなんだと、なんだかうれしくなったものですが・・・。わたしもゲリラ戦のつもりで草刈り機を振り回しているしだいです。

夏のはじめ、あんなにいたおんぶバッタの姿もなく、適度に雨も降ってくれるので、秋・冬野菜の発芽は好調で、生育もいいみたいです。その点では虫がすくないのはありがたいことなのですが、安易に喜んでばかりもいられない気もします。

年々、虫が減り、カエルが減り、小鳥の姿もまばらになってくると、次はだれだ、と思わざるを得なくなってきますものね。生態系の下支えが脆弱になってくると、一時的にはいいこともあるでしょうが、長い目で見るとおそろしいことになりそう・・・。ちょうど酸性雨が降りはじめのころ、一時的に農産物の生育がよくなって農家を喜ばせたように、後になって大きなしっぺ返しがあるんじゃないか。日本にいるとわかりませんが、世界中で水争いが深刻な問題になっているといいますから、やがて食糧問題も深刻になってくるにちがいありません。

飢えて死ぬか、争って死ぬか。世界中で繰り広げられる紛争も、好戦的な気分が蔓延するのも、もしかしたら増えすぎた人類を淘汰するための自然の摂理なんだろうか、と思う今日このごろです。

今週の野菜とレシピ

今週も夏野菜が目白押し。そろそろ秋の香りのするものがほしいところですが、そうも行かないのが農産物のつらいところです。ただ今生育中ですから、今しばらくご辛抱くださいね。

葉生姜は軽く塩もみして甘酢につけ、テーブルの上に置いておくといつの間にか消えてしまう不思議な食べもの。新さんまを焼いて、そこに生姜を添えて・・・などと思っていたら容器が空になっていたりします。酢に漬けると生姜がきれいなピンク色になる。そんな化学変化を楽しむこともできます。

茄子とオクラの揚げ浸し。

茄子は適当な大きさに切り、オクラはヘタを取り除いて素揚げ。熱いうちに麺つゆに浸けておきます。冷めてもおいしく、残った麺つゆはそのまま素麺や冷や麦にご利用ください。

いっしょに茄子のヘタ、オクラのヘタをガクの部分だけ削り取ってかき揚げにしてもおいしいですよ。たくさんはできないので、これを食べるのは料理人だけに与えられる特権。素揚げのついでに揚げておいたものを、お昼にこっそり麺つゆで煮て、ヘタ丼というのはどうでしょう。


モロヘイアも衣にからめてかき揚げにすると、湯がいただけではわからない香りが出ます。お茶の葉に似た香りがするので、おひたしに飽きた方はお試しください。