白内障

2014年10月第2週

今週の野菜セット

左から

週はじめの十三夜は、台風18号でおじゃんになりそう・・・。先月の十五夜も曇天でお目にかかれませんでしたから、今年は月見には恵まれないようです。でも、片見月は縁起がわるいといいますから、これでよかったのかもしれませんけどね。

四季折々、いろんな行事があるんでしょうけど、そういうことには疎くてもなぜか月見だけは欠かしたことがないのですが、十五夜も十三夜もお目にかかれないなんていうのは、今までなかったと思います。まるでお月さまが姿を隠して自粛しているように感じられるのは、夏の間、頻発した大水騒ぎに加えて今回の噴火騒ぎ。次から次と地上の異変が続くからでしょうか。今度の台風もどんな足跡を残してゆくのか・・・。台風一過の夕空に、満面の笑みをたたえたお月さまが出てくれるといいんですけどね。

私事で恐縮ですが、つい先日、白内障の手術を受けました。今年に入ってから、とくに視力の衰えを感じるようになっていたのですが、眼の手術なんていうと昔、ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリが共同で作った「アンダルシアの犬」という実験的な映画。アップになった女性の眼にカミソリが当てられて、どろりと液体が流れ出すというファーストシーンが思い出されて、どうしても腰がひけてしまうのでした。

H医院の先生方も急ぐ必要はない、といってくれるので延び延びになっていましたが、まわりの同年配の友人たちに聞いてみたら、ほとんどが手術の経験者。痛くない、痛くない、十分かそこらで終わってしまうから・・・。というようなわけで、小心者のわたしもようやく決心がついたのでした。

そして受けてみたら、みんなのいうとおり自分を取り巻く世界が一変していました。世界がこんなにうつくしいのに、そうとも気づかず生きていたのかと思うと、なんかものすごくもったいないことをしていたような感じで、庭先の雑草も畑のネギも、なんでもないようなものがほれぼれするほどうつくしいのです。ただひっくり返してあるだけの畑の土くれでさえ、しみじみと見入ってしまうほど複雑に彩られています。

そんな調子だから、散歩に出てもなにもかもが新鮮で、ついつい歩みが遅くなる。気がつくと犬がずっと先のほうで、呆れたようにこちらを見ています。これで紅葉でもはじまったら、いったいどうなるんでしょうか。半狂乱になりかねませんよね。しかし、いいことばかりではありません。恐ろしいのは鏡の中。だれだ、この婆さんは・・・というようなのが深夜、こちらを睨みつけているのですから、まるでホラー映画です。詳細に見えれば見えるほどうつくしくなる自然界に反して、こちらは詳細になればなるほどアラが出て、正視に堪えなくなってしまう。おなじく神の手になる造形物のはずなのに、このちがいはなんなんだろうと思いました。それだけ自然からかけ離れてしまったってこと?

びっくりするほどシミだらけになっている顔など見ていると、加齢とともに視力が衰えるというのも、もしかしたら神さまの粋な計らいだったのかもしれないとも思えてきます。きれいなつもりだった室内も、あちらこちら薄汚れて見えてきますしね。困ったものです。

今週の野菜とレシピ

青山さんが私用で岩手の安比高原に出かけているため、今週は好子さんのワンマンショーみたいになりました。里芋大根にんじんと揃ったところでけんちん汁にしてみましょうか。ただし、にんじんが黄色いタイプなので、彩りはちょっとわるくなるかもしれません。

ほうれん草も登場しました。小松菜は今週いっぱい、生育待ちになりますが、小松菜に勝るとも劣らぬ味わいの中国野菜・ター菜が入りました。炒めものに最適で、片栗粉でとろみをつけると、料理に溶けだした豊富なビタミン、ミネラル分が無駄になりません。肉、または魚介類といっしょにどうぞ。

すだちはサンマの塩焼きに添えてください。びっくりするような高値のサンマも、だいぶ落ち着いて庶民の魚らしくなってきました。すだちや大根おろしといった脇役が揃ったところで吟味しなおしてくださいね。

青山さんの稲刈りは安比から帰ってからになりそうです。例年なら今週あたりから新米が出てくる予定なのですが、申しわけありません。もうしばらくお待ちください。