お盆

2014年8月第2週

今週の野菜セット

左から

蝉の喧噪にツクツクボウシが加わって、夏の暑さも後半戦に入ったようです。

夜、お風呂に入っていたら一瞬、リイリイとコオロギの羽音。まさかと思って耳をすませましたがそれっきり。でも、日ごとに数が増えて、夜間だけは秋の風情になってきました。

田圃に囲まれた農道では、香ばしい花の香りに包まれるようになりました。稲の花です。早いところではもう穂が頭をたれていて、それを数粒拝借してみると、籾の中はミルクでいっぱい。嘗めてもなんの味もしませんが、これがゆっくりと時間をかけて米粒になるんですね。

話は変わりますが、芋虫が蝶や蛾になる手前、さなぎになるでしょう。あのさなぎの中はどうなっているかというと、どろりとした透明な液体なんですって。わたしはあの芋虫に羽が生えてくるだけかと思っていたのですが、一度きれいに分解されて、原初の混沌とした状態にもどってから生まれ変わっていたんですね。さなぎにメスを入れて、それを確認する気にはなれませんが、ミルク状の米を見たとき、おなじような生命の神秘を感じたものです。

今週はお盆。ということは今年もまた、ペルセウス流星群が見られるようになる。ペルセウス流星群というのが彗星から落とされる塵と知ったのは、つい最近のこと。それまではお盆が近くなると、やたらと流れ星が多くなるので、人が死んだら星になるというのは、案外ほんとうのことだったのかもしれない。それでみんなお盆になると帰ってくるのか、なんて思ってたんですね。

いい年をして・・・と思われるかもしれませんが、そんな想像をしていたほうがよかったのかもしれません。今では盆踊りなどというのも廃れてしまって、たまにやっているところがあっても大音量のスピーカーに、過剰な照明。あれは本来、薄暗いところで頬被りなどして踊るものだったんだそうです。それは死んだ人もすんなりと加われるように、という配慮だったそうで、生者と死者が入り乱れて踊る。魂の交歓の場だったんですね。

死者に対するデリカシーが失われた分、今を生きている人に対しても冷淡になっているんじゃないか。人間関係が殺伐としてきた上に、自分で自分の首を絞めるような、奇妙なエゴイズムが横行しています。今のご時世じゃ、盆踊りも騒音なら、子供たちの歓声ですら騒音扱い。そのうちに秋の虫の声がうるさいといって、農薬散布を要請する御仁もあらわれるかもしれません。

こういう深いところの意識の流れというのは、わたしたちがちょっとやそっと努力したぐらいではどうにもならない。死んだ人たちにあたりを漂ってもらわないことには、この空気は変えられないんじゃないかと思うんですけどね。

各地に膨大な雨を降らせた台風11号も、このあたりでは散発的な夕立程度の降雨量になりました。ただ、風が強かったので、ミルクをたたえた稲穂がかなり倒れているみたいです。でもまあ、大事にはいたらずに済みました。

夕べは外に出て、まるでコマ落としのように流れていく雲の切れ目から、満月ちかい月光があたりを照らすのを眺めながら、あたりの景色のうつくしさと、そんなものに見入っていられる余裕に感謝。今夜はスーパー・ムーンです。台風一過の澄み渡った夜空に、さぞかし大きな月が出現するんでしょうね。

今週の野菜とレシピ

野菜セットは夏野菜の定番が続きます。ところが、プチトマトがメニューから姿を消してしまいました。先週のあまりの暑さに、トマトが灼けて、木も傷んでしまったようです。茄子の花も灼けて、先週はぽろぽろと落ちてしまったそうです。

それに引き替え元気なのがゴーヤオクラモロヘイアといった亜熱帯の野菜たち。きゅうりも猛暑には弱いのですが、週末、台風の影響で雨が降ってくれたおかげで、生気を取りもどすことができたようです。しかし、それも昨夜の風に揉まれてしまったため、茄子もきゅうりも傷がついているかもしれません。とくにきゅうりは葉っぱに細かいトゲがあるので、揉まれると表皮が剥けてしまうそうです。事情を察してお許しください。