イスラエルの暴挙

2014年8月第4週

今週の野菜セット

左から

お盆を過ぎたら秋風が立つ、というのは過去のことになったんでしょうか。一時的に気温が下がりはしたものの、厳しい残暑が続いています。今週はどうなりますか。今週いっぱいで八月も終わり。そろそろひと息つきたいところです。

そんな猛暑もアラレちゃんにいわせると、家の中に泥水が押し寄せたり、流されたりすることにくらべたら天国みたいなもの。来る日も来る日も「観測史上初」みたいな雨に祟られることを考えたら、かんかん照りのほうがまだましじゃない?

それを聞いていた青山さん。土石流や土砂崩れがあったところで、イスラエル空軍みたいなのに昼も夜も無差別爆撃されるのにくらべたら、まだましかもしれない。まあ、それはそうなんですけどね。人も自然も、いつ牙をむいて襲いかかってくるかもしれない。今や、いたるところがレッドゾーンになりつつあるのかもしれません。

ひと雨降れば山が崩れ、旱魃が続けば山が燃える。こんな極端な現象は、人と人がいがみ合えば合うほど加速されるんじゃないでしょうか。汝の隣人を愛せよ。さもなくば自ら滅びの道を歩むことになる、というような真理は自明のことのはずなのに、不寛容の波は世界中に広がりつつあります。

もっとも、それを説くはずのキリスト教自体が、エルサレム奪還を試みたり、異端審問に熱をあげたり、不寛容そのものみたいだった時代があるぐらいだから、人の業というのはかぎりなく深く、それは人という生きものが存在するかぎりなくなることがないのかもしれません。

なんだかねえ。暑いの寒いのいっていられる幸運を享受しつつも、それが幸福には繋がらないような、居心地のわるいものを感じている昨今です。なにより、イスラエルのような「ならず者国家」に対して、国際社会がなんの制裁も加えられないのが歯がゆくてしかたないんですよね。

いや、国際社会がなにもできない、のではなく、国際社会がそれを黙認しているといったほうがいいのかもしれません。ヨーロッパ諸国は長年にわたってユダヤ人を迫害してきたという後ろめたさから、イスラエルの建国を全面的に支持。その後のイスラエルの暴虐にたいしても、内心では眉をひそめながらも口出しできないでいます。それどころかユダヤロビーの力が強いアメリカなどは、むしろそれを後押ししているぐらいです。もちろん日本はそれに追随しなければなりません。イスラエルに対して面と向かってノーといえる大国といったら中国ぐらいしかないのですが、一党独裁の維持しか頭にない中国政府はそれどころではなさそうです。

つまり八方ふさがりというわけで、しかたがないので広河隆一の「帰還の坑道」をまたぞろ引っ張り出してきて読みかえしています。1982年のベイルート侵攻が舞台になっています。もともとフォト・ジャーナリストとしてイスラエルのキブツに関心があった広河氏は、取材するうちに矛盾を感じるようになり、一転してパレスチナ側に身を投じます。以来、四半世紀にわたって難民たちの惨状に関わってきた広河氏による、いまのところ唯一の小説です。

イスラエル軍による難民の虐殺は、まるでアドルフ・ヒトラーが乗り移ったかのように冷酷で、しかも徹底的です。灼熱のベイルート・キャンプでは、死刑宣告を受けたに等しい二十万もの難民がひしめいていました。小説ではそこにひとりの日本人が秘密裏に招聘されるのですが、彼は青函トンネルの工事に携わった技術者という設定。はじめのうちは拉致にちかい理不尽な招聘が気に食わず、パレスチナ問題にも部外者の立場を取っているのですが、難民たちとともにトンネルを掘り進むにつれて、かれらと一体化して、最後には二十万の人たちを無事にトンネルを通過させた後、イスラエル軍と闘うためにトンネルをもどって行く人々に彼も加わわります。

しかし、実際にはトンネル工事は間に合わず、その後レバノンを訪れた広河氏は封鎖された難民キャンプにはとうとう入れず、砲撃の合間に封鎖を解かれたベイルート空港から飛び立つことになるのですが、上空から見るとビルの林立するベイルートの街はずれに瓦礫の空間が広がっていたそうです。それがサブラとシャテイーラというキャンプ地で、予定通り死刑は執行されていたのでした。

広河氏がミステリー仕立ての小説を上梓したのは、彼の地から遠く離れた日本に住むわたしたちに、パレスチナ問題を他人事として見過ごさないでほしいという願いがあったからだと思います。小説とはいえ、そこに描かれている阿鼻叫喚は現実のものであり、命がけでそれを取材してきた経験なくしては書けないものだと思います。まだお読みでない方には一読をおすすめします。

今週の野菜とレシピ

ひさびさに春菊が登場しました。胡麻和えでも、おひたしでも、お酢を少々加えるとおいしくなります。

きゅうりは台風11号の風にもまれて、木が弱ってきています。したがって今回が最終便。もしも間に合わなければ、代品が入ることもありますので、ご承知おきください。

ゴーヤは先週が佃煮だったので、今回は甘酢漬け。佃煮とおなじように半分に割って種を出したら、できるだけ薄くスライスして塩もみしておきます。軽く水洗いしたところへ玉葱もスライスして加え、両方合わせてぎゅっと絞り、甘酢に漬けます。玉葱は無事に残っているものを一個ずつ入れておきますので、それをお使いください。

乾燥したクコの実も加えて漬けると、彩りがきれいでデトックス効果も高くなります。作ったその日から食べられますが、ひと晩ぐらい寝かせたほうがおいしいですよ。