スコットランドの花

2014年9月第4週

今週の野菜セット

左から

すっかり秋らしくなって、朝夕は肌寒く感じられるようになりました。今週はもうお彼岸。庭先のみならず、道ばたでも、田圃の畦でも彼岸花が真っ赤に咲き乱れています。

田圃の周辺に彼岸花が多いのは、モグラが畦に侵入するのを防ぐため。彼岸花の球根は有毒なので、モグラが近寄らないんだそうです。でも、彼岸花の英名はリコリスで、こちらのほうは薬用なんですけどね。もしかしたら種類がちがうのかもしれませんが、毒と薬は紙一重ということなんでしょうか。微量であれば薬になるものが毒で、大量に摂取すれば毒になるのが薬ですから、そのへんの境界はきわめてあいまいで、もし科学的に合成されたものが毒物だとしたら、ほとんどの薬品は有害ということになりますものね。

繊細な細工ものみたいな花を前にして、なんとも無粋な話になってしまいましたが、妖しいうつくしさをたたえた花のこと。おなじように真紅の花を咲かせる芥子が麻薬になることを考えたら、毒ぐらいあっても不思議はないのかもしれません。

彼岸花とは正反対に高いところで咲いているのが独活の花。ヤツデの花をもうすこしやわらかくしたような球状のつぶつぶが、大木となった独活のてっぺんで咲き誇っています。彼岸花がその妖艶さのわりに、生け花にすると意外と凡庸になってしまうのにくらべ、こちらは花自体は地味なのに、花瓶に挿すと本領発揮というか、実力以上というか、室内の雰囲気を一変するぐらいの代物になるのです。

畑の中にやたらと出てくるカヤツリ草もそういうところがあります。概して花屋の店先にある花よりも、道ばたに咲いているようなもののほうが、実際に室内に入れてみると花があるというか、見栄えがよくなる傾向があるみたい。わが家でいうと前庭にあるものよりも、裏庭にひっそりと咲いているもののほうが利用価値が高いんですね。

この時期、都会の路傍でも稲科の雑草たちが地味な花をつけているのではないでしょうか。たとえば猫じゃらし。そういうものを活けると、室内にも秋の風情が漂いますし、道ばたに咲くものをちょっと拝借するという行いそのものが、ちょっとした心の余裕になりそうです。

話は変わって、スコットランドの独立が住民投票で否決されましたね。内心、スコットランドが独立を勝ち取って、イギリス政府をぎゃふんといわせてやりたかったので、がっかりしています。心情的には独立したくても、やっぱり生活の安定がいちばんということなんでしょうから、外野がとやかくいうことではないのかもしれません。

でもねえ。イギリス人はアイルランドやスコットランドをバカにしているところがあって、たとえばうっかり、車の窓を開けたまま鍵をかけようとすると「あんたはスコテイッシュか」などと揶揄される。「こんなものはスコテイッシュでも食べないだろう」とかね。わたしの友人がとくに偏狭なわけでなく、全般にそういう傾向があるみたいで、たとえばカラス麦。イギリス人は馬に食わせるが、スコットランドでは人間が食う、といったことが堂々と辞書などに載っているそうです。もっともスコットランド人のほうも負けてはなくて、イギリスでは名馬が育つが、スコットランドでは優秀な人材が育つ、とやり返しているそうですけどね。

そのスコットランドに足を踏み入れたことはありませんが、その手前、イギリス北部では西洋アザミが人の背丈ほどに育っているのがあちこちで見られました。これも球状の花をつけるので、日本では瑠璃玉などと呼ばれていますが、かつて見たアザミの勇姿が忘れられず、何株か瑠璃玉を庭に植えたところ、十年経っても二十年経っても、人の背丈どころか腰の高さにも届かなく、花もちらほらとしか咲きません。土壌がちがうんでしょうねえ。

わずかに咲いた瑠璃玉は居間でドライフラワーになりかけていますが、これは唯一、前庭に咲く利用価値の高い花。だって枯れても風情があるので、一年中観賞に堪えられるんですから・・・。それを横目に、スコットランドの複雑な心情に思いを馳せているしだいです。

今週の野菜とレシピ

今週は舞茸が入りました。例年より秋の訪れが早いので、キノコの出るのも早くなったみたいです。今回は100グラムと量がすくないので、てんぷらがおすすめ。来週はもうすこし多くなると思いますので、舞茸ご飯はそれからにしてくださいね。

予想外の舞茸の登場で、さつま芋がまたしても先延ばしになってしまいましたが、これも来週のお楽しみ。

紫蘇の実は醤油漬けにしてください。まず、紫蘇の実を半日ぐらい水に浸けてアクを抜きます。それをザルにとって水気を切ったら、添付の唐辛子と生姜をみじん切りにして加えますが、唐辛子を2本も入れるとかなり辛くなりますから、よほどのピリ辛好きでなければ1本で十分だと思います。それをさらにぎゅっと絞って水気を切ってから容器に入れ、醤油をひたひたに入れればできあがり。翌日から食べられます。できれば新米でいただきたいものです。

味の濃くなってきた秋茄子は、焼き茄子にするとおいしさが際立ちます。ラデイッシュはそのまま塩か、味噌とマヨネーズを混ぜたものでお召しあがりください。