寒い国・寒い人々

2015年1月第3週

今週の野菜セット

左から

あたたかいのか寒いのか、よくわからない微妙な時期。春と冬に季節を分ける節分前の「気の迷い」のようなのが感じられます。

寒さのほころびがなにかの拍子にすこしでも広がると、ぽかぽかとあたたかく春の陽気に包まれますが、それに甘えかかろうとするとぴしゃりと冷たい平手打ちが飛んでくる。平手打ちだけならいいけれど、そういう気の迷いのようなものに惑わされ、気がゆるんだところにしのびこんでくるインフルエンザのようなものもあります。今年も流行りはじめているみたいです。おたがいに用心しましょうね。

毎朝のように霜が下り、日の当たらないところでは日中でも霜柱が立っていますが、この冬はまだ雪を見ていません。去年の今ごろは雪山を歩きまわっていたんですけどね。降ったら降ったでいろいろ支障はありますが、この時期、山の中に雪がないというのも寂しいものです。しかし、贅沢はいってられません。北海道は積雪だけでなく、寒さも例年の比ではないとのこと。旭川の横畠さんのところでは、出荷用に保存していたじゃが芋が全部シバレてしまったそうです。

暮れに催促したときは吹雪続きで出荷不能。年が明けるのを待っていたら、今度は全滅。じゃが芋はさつま芋や里芋にくらべたら寒さに強く、少々のことでは傷んだり腐ったりしないものですが、横畠さんの話によるとこんな寒さは七十年ぶりなんだとか。旭川というところは北海道の中でも寒さの厳しいところなので、とくに被害が大きかったそうです。

というわけで、この冬は野菜セットからじゃが芋が消えることになりました。これも冬将軍の平手打ちみたいなもんでしょうか。このあたりも今週あたり、冷えこみが強くなるそうです。

冬の寒さはしかたのないもの。春の訪れとともに去ってしまう一過性のものですが、人心の荒廃のもたらす寒さはそういうわけにはゆきません。この国でも隣国との関係がわるくなるにつれ、ヘイトスピーチみたいなものが蔓延しましたが、ヨーロッパでも相変わらずユダヤ人やロマに対する差別が根強く、そのうえ景気のいいときに労働力として大量に迎え入れた移民たちを、排斥しようという動きがしだいに大きくなっているようです。

そこへもって来てフランスのあの騒ぎです。表現の自由に対して暴力で応酬するのはたしかに卑劣です。が、相手の心情を顧みない侮辱まで表現の自由に加えるのであれば、ヘイトスピーチも許されることになる。予言者の風刺画というのはそういう類いのものではなかったでしょうか。

だいたい風刺や諧謔といったものは、面と向かってはなにもいえない権力に対する抵抗だったはず。つまり下にいる者が、はるか上位にいる者に向けて放つものですが、問題の風刺画を見たわけではないけれど、どうしてもあれがそういうものだったとは思えない。それどころか西欧人がアジアやアラブ世界に対して抱いている、なんの根拠もない優越感を丸出しにしたものではなかったのでしょうか。上から目線のメッセージは、風刺ではなく、侮蔑に満ちたからかいやちょっかいになってしまうのです。

だいたいシャルリー・エブトなどという新聞は、もともとゴシップやらあまり品のよくない風刺画(漫画?)を掲載するキワモノ週刊誌で、発行部数も三万部ほどだったといいます。それが今や、仏ジャーナリズムのトップに躍り出たかのような異常な扱い。元祖・自由と平等の国も墜ちたというか、鍍金が剥げたというか、もちろんそれに眉をしかめる人たちもいるんでしょうが、いつの世でも国全体がファナテイックになってしまうと、冷静・沈着な少数意見はかき消されてしまうようです。

たしかに暴力はいけません。いかなる理由であれ、殺人も許されません。そんなこと、あんたらにいわれんでもわかっとるのです。しかし、国家の暴力やら殺人は不問にされるのに、少数派のグループがそれをやるとどうして「憎むべきテロリスト」になってしまうのか。それよりなにより自由で平等なはずのヨーロッパ世界がなぜ、かくも過激なテロリストを生み育ててしまったんでしょう。そういうことに思いを向けないまま、何百万人が反テロを叫んで気勢をあげても、あまり意味がないと思うのですが、日本をはじめ、そういう正論を面と向かってぶつける勇気のある国はなさそうです。そういうときこそ、ほんとうの風刺画の出番なんですけどね。

今週の野菜とレシピ

先週に引き続き、結球できなかったぼさぼさレタスが入りますが、おつきあいくださいね。先週のレシピを再現したくない向きは、ザーサイのかたまり半分ぐらいを細かく刻み、水から煮て十分に塩気と出汁が出たころ、ざくざく切ったレタスと春雨少々を加えてスープにしてください。ザーサイの辛みと塩分でほとんど味つけは必要ありませんが、コクを出すためにオウスターソースをと胡麻油少々をたらしてお召しあがりください。

しめじは油炒めして塩、胡椒と醤油少々で濃いめ調味。しめじが熱いうちに

食べやすくカットしたほうれん草と混ぜ、レモン汁をたらします。白ワインがあれば申し分ありませんが、なくても美味。パンもご飯もよく進みます。

白菜は一回で使いきるお手頃サイズです。あたたかい鍋ものにしてどうぞ。

年が明けましたが、餅つきは春先まで定期的に続けられます。

落花生餅も加わりましたので、よろしくお願いします。