小さな異変

2015年7月第5週

今週の野菜セット

左から

猛烈な暑さが続いています。熱中症対策をちゃんとしているつもりでも、外出時は要注意。外出というほどでなく、裏庭でミョウガなどを採ったついでに、ちょっと目についた草をひいただけでも、立ち上がったときにクラッとすることがありますものね。太陽が高くなってきたら、家を出ないに越したことはなさそうです。

でも、この暑さ、意外と短命なのかもしれません。先日、わたしがキノコ採りの師匠と呼んでいるT氏に出会ったところ、彼がまるで重大発表みたいに声をひそめていうのです。クマちゃんよお、今年はなんだかおかしいから山の中に入ってみな。秋のキノコがもう出てっから、網茸も栗茸も柿茸も・・・。この夏は例年になく雨が多いので、キノコ類が豊富でもなんの不思議もないのですが、夏には夏のキノコがあります。乳茸とか藍茸とか卵茸とか・・・。そこに、いくら少量とはいえ、十月あたりから出てくるようなキノコが混じっているというのですから、やっぱりこれは異常事態。二宮金次郎なら即刻、小田原に向けて早馬を走らせるところではないでしょうか。

あまりにも有名な話なので、みなさんご存じとは思いますが念のため。二宮金次郎は小田原藩の人ですが、ここ真岡の隣町が小田原藩の飛び地になっていました。現在は二宮町と呼ばれていますが、当時は櫻川村。なぜそんなところに金次郎がいたかというと、櫻川の男たちは昼間から酒を飲んだり博打をしたりで、さっぱり仕事をしないから年貢米も上がってこない。そこで監督兼指導者として彼が小田原から派遣されたわけ。

そこであるとき、農家で出された茄子を口にしたとき、それが秋茄子の味になっていたため、すぐに農家を集めて稗などの雑穀の種を蒔くよう指示。そしてみずからは小田原城に向けて早馬を走らせたといいます。それから天保の飢饉という歴史に残る大惨事がはじまるわけですが、金次郎の働きにより、小田原藩は櫻川もふくめ、ひとりの餓死者も出さずに飢饉を乗り切ることができたのでした。

地名が二宮になったぐらいですから、金次郎の影響は絶大で、二宮の人たちはついこの間のことのように彼のことを話題にします。この事務所から東に数百メートル行ったところには、一年を通じて滔々と水をたたえた用水路がありますが、この水の行き先が二宮で、これも金次郎の遺産なのだそうです。

今週はみんなでじっくりと茄子を味わってみましょうね。味が濃厚になっていたら要注意。まあ、人間にはそのほうがありがたいのかもしれませんが・・・。

今年の夏はどういうわけか、トンボがやたらと目につきます。最近では滅多とお目にかかれなくなったオニヤンマも、いたるところで勇姿が見られるくらいです。

でも、ちょっと待て。畑の上を群れているその他大勢のトンボをよく見ると、ついこの間までのシオカラトンボではなく、胴体が茶色っぽくなっています。名前はわかりませんが、夏のトンボという感じではなさそうなんです。

それからわが家のミョウガにも異変。例年なら今ごろ出てくるのは早生ミョウガなのですが、今年はどういうわけか八月中旬になって出てくる秋ミョウガのほうが早いのです。どうもこれまでとは様子がちがう感じですから、この殺人的な暑さも、もうすこしの辛抱かも。今のうちに堪能しておくとしましょうか、ふうっ。

今週の野菜とレシピ

ゴーヤオクラが加わって、夏も盛りの野菜セットになりました。ゴーヤは好き嫌いが分かれますが、苦みが苦手という方は輪切りにしてから種とワタを抜き、小麦粉、溶き卵、パン粉で衣をつけて揚げてみてください。苦みが消えてマイルドになってますよ。

中玉トマトプチトマトも味はいいのですが、皮が厚くて食べにくいのが難点です。トマト好きの老母がさっぱり手を出さないので、どちらも熱湯をくぐらせてから皮を剥き、塩をまぶして冷蔵庫に入れておきました。そしたらまあ現金なもので、あっという間になくなっているんです。わたしも冷蔵庫を開けたついでに頬張ったりるんですけどね。凝ったドレッシングなどでなく、塩だけというのもたまにはいいもんですよ。

ピーマンはヘタを落としたら半割にして、中の種は取らずに調理してください。種がやわらかくて甘いのです。また、ピーマンはミョウガと相性がいいので、素揚げにするか炒めるかしたピーマンに鰹節とミョウガの小口切りを載せ、醤油で召し上がってみてください。食欲のないときでもご飯が進みます。

オクラには産毛のような繊毛に覆われています。生のまま小口切りにして、酢少々と醤油で食べたり、納豆に混ぜたりするのが一般的ですが、この繊毛が気になるという向きは、さっと熱湯をくぐらせてから調理してください。