春のざわめき

2015年3月第3週

今週の野菜セット

左から

あたりが急に春めいてきました。ウグイスの稚拙な初鳴きは一度、山の中で聴いたきりですが、ヒバリたちのかん高いさえずりがあちこちではじけています。ヒバリは太陽に向かつて飛朔するといわれていますが、そのせいか、曇天下でもかれらのピーチクパーチクを耳にすると、そこにだけ目には見えない太陽があるように感じられるから不思議です。

ウグイスのさえずりが早春の薄ら寒さを思い起こさせるのとは対照的に、ヒバリの声は日だまりのまぶしさと温もりを喚起するようです。これを聞いたら春だ、春だという感じ。そういえば今週末はお彼岸です。どっこいしょと季節が動いたみたいですね。

コジュケイのチョットコイもはじまりました。チョットコイといいつつ、じつはこれ、縄張り宣言なので、だれも来るなといっているのですが、それが最近やけに大きく聞こえます。もともと大声というか金切り声で、遠くまで響き渡る声なのですが、今年はどうもうちの前の道路脇の薮の中で営巣しようとしているみたい。そのせいか、犬も落ち着きがありません。

もしかしたらこの春は犬を繋ぐか、家の中に閉じ込めるか、対策が必要になってくるのかもしれません。犬にとっては災難ですが、子連れのコジュケイの姿を見るためならしかたがないかも。コジュケイは小綬鶏と表されるように、成鳥だけよりも雛がセットで目撃される場合が多く、雛たちが親の後から一列になり、いかなる緊急事態に遭遇してもその隊列を崩さないのが特徴。しかも親鳥が歩いた後を正確になぞるから、まるで数珠玉でも引きずっているような格好になる。以前はそんな光景がよく見られたのですが、最近ではそれも人家から離れたところに限られてしまいました。もし営巣するのなら、無事に育ってもらわないと因るわけです。

そしてもうじき隣近所の郵便受けには張り紙がされ、足元に予備の容れ物が用意されるようになるでしょう。郵便物の投入口のある巣箱型のタイプだと、そこからシジュウカラが出入りして営巣してしまうからです。二ヶ月ちかく不便を強いられるにもかかわらず、隣人たちが郵便受けを取り替える気配はなく、わが家に来るツバメのように歓迎されているみたい。でも、毎年無事に雛が巣立つとはかぎらないので、けっこう気が揉めるみたいです。小鳥の巣箱のつもりが、いつの間にかヘビの宿屋にすり替わっていることがありますからね。

しかし、悪役も生きものです。何年も前の話ですが、シジュウカラの卵か雛か、巣箱の中のご馳走を頂戴した後もしばらくそこに滞在し、郵便受けの持ち主のペットとなってひと夏を過ごしたシマヘビがいます。餌は自分で調達できるので世話要らず。部屋の隅かソファーの上でのたーっとしているだけでしたが、夏が終わって気温が下がってくると布団の中に入ってくるようになり、たとえ相手がヘビでも、そうなると情が移ってくるそうです。夜寝るときはきちんととぐろを巻いているのに、朝になるとでれーっと伸びきって

いたりするのも可愛くてしかたがなかったみたいです。

今は一児の父となっている隣人の若かりしころの話。そのままずーっと布団にいてほしくて、電気あんかを買って来たりしましたが、秋の終わりには姿を消してしまったそうです。そして次の夏、再会を期待するもそれらしきシマヘビは訪れず、隣人にとってはそれが、今でも胸がキュンとなる思い出なんだとか。儚い恋の物語?

わたしはヘビと同衾したいとは思わないけど、冬眠から覚めたばかりのヘビに寒い思いやひもじい思いはさせたくないので、何カ所かに波板トタンを置いて、急に気温が下がったさきに暖をとれるようにしています。それから卵盟舎の奥さんにうんと小粒の有精卵を頼んでおきます。まむしは身体が小さいので、ふつうサイズの卵では呑みこむことができないからです。虫やヘビにとっては今が正月みたいなものだから、これはお年玉なんですが、置き場所には気をつけないとカラスに持って行かれてしまうんですね。

卵を片手に薮の中をうろうろ、ごそごそ。春だなあ、と実感するのがこのときです。

今週の野菜とレシピ

こちらも春らしく、好子さんのかき菜が入りました。かき菜はあぶら菜の一種です。ほんのりとした苦みと甘みが身上で、冬の間に貯めてしまった毒抜きをしながら、春を満喫してください。

この冬最後のさつま芋。こんな時期までさつま芋があるのが不思議なぐらいいですが、高橋さん日く、去年はお宅のほうでイノシシをみんな引き受けてくれたから、おかげでうちのほうは助かったんだよ・・・。べつに引き受けたわけではないのですが、高橋家とわが家は山のあっちとこっちにあるので、片方にイノシシが集中すれば、もう一方は助かるというわけ。長い間、あちら側に被害が集中していたので、イノシシもこれでは不公平だと思ったのかもしれませんね。

この時期にさつま芋というと、季節外れな感じがしないでもありませんが、ちょっと太めのマッチ棒サイズに切って、しめじといっしょにオリ}ブ油で妙め、軽く塩、胡撤してみたら美味でした。さつま芋の味噌汁というのも、男のひとはいやがりますが、たまにはおいしいものです。仕上がりにぶつ切りにした青葱を入れるのがコツ。葱の甘みが芋の甘みをさっぱりしたものにするみたいです。


野菜たっぷりセットの方には、青山さんの奥さんが作った切り干し大根のほか、見慣れないものが入っています。これは牛蒡の新芽で、本体の牛蒡同様てんぷらにするか、きんぴらでお召しあがりください。牛蒡の葉のきんぴらは関西ではポピュラーな食べもので、子供のころはよく食べたものですが、あれは初夏の話です。早春の新芽はそれより身がしまっているので、素揚げにしてから麺つゆに漬けこんだほうがおいしそうです。お好みで唐辛子をふってどうぞ。

切り干し大根のほうは次週、みなさんのセットにも入ります。