愛鳥週間

2015年5月第1週

今週の野菜セット

左から

ゴールデンウィーク中、益子では住民の倍ちかくの人と車が陶器市に押し寄せます。一方、農道では町中の喧噪をよそに、田圃の脇に稲苗の入った箱が並べられ、家族総出で田植えの真っ最中。所狭しと軽トラが並んだ農道も、わが家のあるような山間部も、町中の混雑を避けるためか、他県ナンバーの車がスピードも落とさずに通り過ぎます。

ナビゲーションが今ほど行き渡らず、性能も今ひとつだったころは、山間部に紛れこんだ車など、腰が引けたようなのろのろ運転だったんですけどね。今も昔も変わらないのは、観光客が通った後には空き缶やプラステイックゴミが散乱すること。そしてどういうわけか、陶器市の人混みが消えた後には、かならずといっていいほど迷い犬が残されるのです。

運良く新しい引き取り手が見つかることもありますが、迷い犬の大半は老犬か病気持ち。愛護センターという皮肉な名前の収容所に送られて、そこで殺処分されることになります。このところ晴天に恵まれていますが、町中をそぞろ歩く観光客の中には、まるで空き缶かなにかのように犬を捨てて、平然と休日を楽しんでいる人もいるのだと思うと、にわかに空がかき曇って雹でも落ちて来ないものかと思います。ま、これも観光地の宿命なんでしょうけどね。

ゴールデンウィークは愛鳥週間でもありました。ちょうどこの時期に営巣、抱卵する鳥が多いのですが、うちの両隣、毎年のように郵便受けがシジュウカラに占拠されていたのが、今年はどちらも姿を見ないそうです。

そういえば、うちのガレージにも今年はツバメがやって来ない。この春から息子夫婦が同居するようになったので、車が満杯になり、ガレージを空けてやることができなくなったのが原因と思われますが、家の一部を改装中で、大工さんが出入りしていたのも関係しているかもしれません。

ツバメにもシジュウカラにも見放された格好でしたが、先週、タケノコを茹でるために勝手口の外の棚から大ぶりの寸胴鍋を下ろしたとき、鍋の中から干し草やら枯れ枝やらがひとかたまりになって落ちてきました。わっ、なんだこれは?思わず汚いものにでも触れてしまったように手を振りましたが、いや待てよ、これはもしかしたら小鳥の巣かも・・・。

そういえば先週あたりから、わたしが勝手口を出入りするたびに、スズメよりひとまわりほど大きな鳥が棚のあたりから飛び立っていたのでした。なにか餌になるものでもあったかな、ぐらいに考えていたのですが、まさか鍋の中で営巣していたとはね。勝手口の外の棚には、いちばん下に不燃ゴミやガラス瓶のコンテナ、その上の段にアルミ缶、スチール缶、ペットボトルとそれぞれ小ぶりのコンテナを並べています。ゴミの分別が年々細かくなって行きますからね。そしていちばん上の段に、ふだんあまり使うことのない大鍋やボウルなどを伏せていました。鍋の直径が大きいため、棚板からいくらかはみ出していたみたいで、小鳥はそこから出入りすることができたようです。

もうひとまわり小さい寸胴鍋に落ちた巣を入れ、棚のふちから数センチはみ出すように伏せておきましたが、はたして親鳥はもどって来てくれたでしょうか。隣人の話から、この鳥がシジュウカラだとわかりました。郵便受けにどんな不都合があったのかわかりませんが、さかさまになった鍋の中に小鳥の巣があろうとは、さすがのヘビも思い及ばないでしょうねえ。これが新しい戦略だとしたら、うまく行ってほしいものです。

カラスの巣ではもう雛が孵って、羽根も生えそろってきています。大きさも親鳥と見分けがつかないぐらいですが、巣の中にいるので子供だとわかります。カラスは通常五個から六個の卵を生みますが、それが無事に孵ったところで大きくなるのは一羽か二羽。オギャーと生まれてから羽根が生えてくるまでに、かなり熾烈な生存競争があるみたいです。

カラスの巣も今までは裸の木のてっぺんにあったので、簡単に見つけることができましたが、新緑が育つにつれそれが日よけになり、目隠しにもなってわたしたちの目につきにくくなりました。でも、ところによっては青葉の中から親子が押し合いへし合いしているのが見えることもある。巣の中にいる雛と、ふちに止まって面倒を見る親と、それが傍目には家族風呂で団欒している姿に見えますが、この仕合わせも幼い兄弟達の犠牲の上に成り立っていたんですね。

愛鳥週間といったところで、わたしたちになにができるわけでもない。ただただ、かれらのサバイバル精神に脱帽、感服するばかりです。

今週の野菜とレシピ

タケノコが終わったら、今度はフキです。タケノコ同様、フキも鮮度が命ですから、届いたらその日のうちに葉っぱと茎を切り離し、湯がいてください。

葉っぱのほうは、茎を湯がいた残りの湯に浸すだけでけっこうです。

茎は湯がいてから皮をむいたほうが簡単ですし、手指も汚れません。濃いめの出汁でじっくり煮ふくめてお召しあがりください。煮汁は捨てないでくださいね。これで高野豆腐を煮るのですが、ぬるま湯でもどした高野豆腐の水気を絞り、表面に小麦粉をまぶしてさっと揚げてから煮ると、あのスポンジのようなパサパサ感がなくなって、生麩のような食感になります。小鉢に盛って、三つ葉を添えると京料理の一丁上がりです。

湯通しした葉っぱのほうは大まかにざくざく切って、ぎゅっと握って水気をよく切ったら、同量の酒と醤油で佃煮にします。どんなにきつく絞っても、フキの葉からはかなりの水分が出ますから、じっくりことこと煮込んでください。煮汁がすくなくなってきたら、強火にして鍋底をかき混ぜながら一気に水気を飛ばし、さいごに鰹節をたっぷりからめたらできあがり。

絹さやも出てきました。卵と相性がいいので、油炒めして溶き卵をからめても、出汁をきかせた卵とじでも、どちらでもお好きなほうで初夏の香りをお楽しみください。