ヒヨドリ

2015年2月第2週

今週の野菜セット

左から

立春を迎えて気温が急に低くなったような気がしませんか。大寒などというのが意外にあたたかく、節分あたりでぐっと冷えこむというのが最近の傾向みたいです。福寿草もほころびて、すぐ傍まで来ていた春が急に遠のいてしまったよう・・・。思わせぶりな春と冬のせめぎ合いは、これからが本番なんでしょうね。

それでもモグラ饅頭はぼこぼこと増え続けてますし、早咲きの水仙は霜柱の合間からスズメの嘴みたいなちいさな芽を覗かせています。気温は低くなったように感じられても、土の中ではいろんなものが動き出しているみたいです。

畑に残された雑草も、まるで死んだように地面にへばりつきながら、その実すこしずつ面積を広げているのがわかります。とくにハコベなど、油断も隙もありませんからね。ヒヨドリもキャベツや白菜の残骸ばかり突いてないで、そういうものを始末してくれると好感度が上がるのに、悪役に徹するつもりなんでしょうか。人に歓迎されることはみごとにしませんが、自然界では案外大事なはたらきを担っているのかもしれません。

去年の秋は柚子も柿も不作だったので、かれらも食糧には不足していると見え、ヒイラギや南天の実がなくなると、今度はキンカンやクチナシの実に集中しています。キンカンもこの冬は柚子同様に不作でしたから、貧相な実がまばらにしかついてないのですが、人間の食用にはならなくてもヒヨドリの一群ぐらいは養ってやれそうです。クチナシも今では食紅代わりに使われることもなく、かわいらしいたくさんの実が所在なげにしているのですが、そういうものをきれいさっぱりかたづけて、糞といっしょに種を蒔く。つまり掃除屋だったわけですね。

見境なしに掃除をするので、人間界では嫌われ者ですが、あの騒々しいがさつな鳥たちも自然界ではなくてはならない存在だったとは・・・。もしかしたら神に愛されているという誇りと自負が、かれらをあそこまで傍若無人にしているのかもしれない、と思ったら、なんだかこちらの足場のほうがぐらついて来そうになりました。自信喪失です。こちらのほうはどれだけ神というか、宇宙意思といいますか、根源的なものと繋がっているかというと、はなはだ心許ないですからね。

そうかあ、ヒヨドリ以下だったのかあ、とがっかりしながら畑の中に点在するハコベの広がりを見てまわります。三月に入ると爆発的に増殖し、畑を覆いつくさんばかりになりますが、それでもこれはこれで必要な、いってみればヒヨドリのような草なんです。

三月も後半になると風が強くなってきます。春一番以降、吹き荒れる南風によって失われる耕作地の表土というのは、年間数ミリ程度のものですが、それが十年、二十年と連続すると膨大な土壌が失われることになり、じつはこの表土の問題というのは地球規模の人口増加と相まって、深刻な問題になっているんですね。化学肥料の多用による土壌の劣化で、今後、加速度的に農地が失われて行くだろうともいわれています。

ご承知のように地表のすぐ下は岩盤です。それが表面に近づくにつれ細かい砂になり、その砂の中に有機物が混じっては腐り、砂の粒より多くの微生物が住み着くことによって、およそ百年かけて数センチの表土ができるという、気の遠くなるような課程を経ているわけです。それが一陣の風で奪われても、人の一生は短いのでそれほどの脅威とは思われない。でも、子や孫の世代になって破綻が露呈するのです。

農業が機械化される以前は、畑の雑草たちがそれを食い止めてきたわけですが、今は耕耘機と除草剤によって丸裸にされた無防備な農地があちこちに・・・。それも大規模な農場ほどそういう状況に置かれているわけです。わが家の畑のように春先はハコベのような草をはびこらせ、四月に入ってから耕耘機を入れるようにすれば、それだけでもずいぶんちがうんですけどね。

でも、それだと種蒔きが遅れるとか、農作業がやりにくいとか、目先の事情が優先されるわけで、そっくりそのまま目先の景気対策しか念頭にない、無責任な政治家の姿が重なります。ヒヨドリ以下とは、こういうことをいうのかもしれませんね。

今週の野菜とレシピ

ひさびさにさつま芋が入ります。高橋さんのさつま芋が年明けまで残っているなんて、何年ぶりのことでしょう。それだけ去年はイノシシの害がすくなくて済んだということですが、その分イノシシたちはおなじ山の東側、わが家のほうに移動してたんですね。今年はどうなりますか。できれば尾根づたいにずっと南か北のほうに行ってくれるといいんです・・・。

今回はさつま芋をあえておやつではなく、おかずとして利用してみます。先週のニンジンが残っていたら、それもプラスしてさつま芋のきんぴら。さつま芋は皮つきのまま5ミリぐらいにスライスしてから、やはり5ミリぐらいの間隔で細切りに・・・。味つけは十分に火が通ってから醤油を少々たらすのみです。

牛蒡が残っていたら、これもおなじように細切りにして、こっちのほうはかき揚げに・・・。輪切りにして湯がき、やわらかくなったところで水を半分ぐらい捨て、砂糖と輪切りにしたレモンを加えて水分を飛ばすように煮て、最後にバター少々を加えます。これはもしかしたらこれはおやつになるかもしれませんが、よろしければ箸休めにしてください。

ほうれん草小松菜春菊もさっと湯がいて、あたたかいうちにちりめんじゃこといっしょに塩と油で和えてみてください。ほうれん草には胡麻油が合いますが、小松菜と春菊は亜麻仁油やグレープシードオイルのようにクセのないものをお使いください。ちりんじゃこに塩分があるので、塩はほんのすこしでけっこうです。くせになるおいしさですよ。