十三夜の山登り

2015年12月第1週

今週の野菜セット

左から

木枯らしが吹き、すぐそこまで来ている冬の姿がちらりとではありますが、垣間見えるようになりました。これから寒くなるというのに、まるで春を目前にしているかのような気分。待ち遠しいというのではありませんが、いいかげん寒くなってもらわないことには困りますものね。

このあたたかさのせいで、近所のおばあちゃんたちが作っている干し柿がダメになっています。カビに覆われて緑色になっていたり、真っ黒になっていると,思ったらそれはハエで、酸っぱいような腐臭が漂っているとか・・・。日中の気温が十五度以下にならないと、干し柿作りはむずかしいんだそうです。でも、柿の皮を剥くころには、先の気温のことなどわかりませんからね。人によっては渋柿を百個も二百個も買いこんで、夜な夜な皮を剥いたのですから、泣くに泣けない気分でしょう。

あっちでもこっちでもそんな話ばかりで、困ったもんだよねえ、といっていたら、富山のさくさく村から葉書が届いて、あちらでも季節外れの高温多湿で干し柿作りはできなかったとのこと。昔ながらの天日干しは全滅、というのはこのあたりだけの話ではなかったようで、あちらでは何万個という柿が、入手をかけたあげくダメになってしまったんでしょう。そんなわけで、いつも年末年始にご注文いただいている干し柿が、今年はお届けできなくなりましたがお許しください。

この時期になると、ときどき夕刻から山に入ります。数人の仲間にうちの犬を加えて、十三夜ごとにわが家の真正面に位置する山頂を目指しますが、なぜ十三夜かというと、四時すぎになると東の空には月が現れ、それからしだいに高くなりながら歩いている問中、木漏れ日のように足元を照らしてくれるので、かなり足場のわるいところでも、懐中電灯もヘッドランプもなしに歩けるからです。十五夜だと六時過ぎにならないと月が出ないので、人の集まりやすい時間帯ということで十三夜登山がはじまったんですね。

それほど険しい山ではないし、標高も五百メートル足らずの低山ですが、そんな山でも尾根に出ると強風が吹き荒れているので油断は大敵。ゆっくり歩いているつもりでも登り坂では汗をかくので、できるだけ薄着で移動して、頂上の手前でありったけのものを装着しないと、瞬時に体温を奪われてしまいます。それだけ着こんでいても寒いので、うどんの煮えるのが待ち遠しい。こっちは待っているだけですが、毎回料理をする人は鍋にコンロに水に食材と、二十キロちかい荷物をかついだあげくのおさんどん。気の毒みたいですが、本人はこれが楽しみなので、こういう友は大事にしなくてはいけません。

あつあつのキムチ入り煮込みうどんをふうふういいながら食べている間はいいけれど、食べ終わって食後のりんごをひと切れ囓ったとたん、震えがくるほどの強風です。身体をあたためるために、夜景を見ながら尾根づたいに歩いてきましたが、帰り道は着ていたものを一枚ずつ脱いで、帰りついたときにはTシャツ一枚。これでも十一月なんだろうか、といいながら解散したのでした。

この冬は雨が多いので、数年前みたいに大きな低気圧が冷やされると大雪になる可能性があります。山歩きをする連中はそれを楽しみにしているようですが、八百屋としては手放しで喜んでいるわけにもゆきません。温暖化というのがただの脅し文句ではなくなってきたのが体感されるようになり、途方に暮れているところです。

今週の野菜とレシピ

ようやく初冬の気配が漂いはじめました。急に冷えこんだ夜など、身体を芯からあたためてくれるのがふろふき大根。土鍋に水を張って昆布を敷き、輪切りにした大根を入れたらひたすらことこと煮るだけですが、大根のおいしさ、ありがたさがいちばんよくわかる料理だと思います。あつあつの大根に柚子味噌をかけていただきますが、二日目は油を敷いたフライパンで両面をこんがり焼いて、醤油と味醂で照り焼きにするという手もあります。こちらのほうは七味唐辛子をたっぷり振ってどうぞ。

先週、赤かぶは塩漬けを作った容器が開いたら、今週は京菜を漬けてみませんか。水洗いして根元に切れ目をいれたら、あとは塩をまぶして鷹の爪といっしょに漬けるだけ。重しの加減にもよりますが、4~5日もすれば食べられます。

青山さんのキャベツ。この時期にしてはめずらしく強い雨が降ったので、雨後、ダメ元で防虫ネットを張ってみたそうです。来週、復活してくれるといいですね。