シジュウカラ

2015年5月第2週

今週の野菜セット

左から

ゴールデンウィークが終わったとたん、熱に浮かされたような陽気も一段落して、ほどほどの気温になりました。ただ、雨のないのが悩みの種で、夏野菜は発芽しない、苗は生育できない、絹さやは水不足で絹どころか木綿みたいな鞘になりそう・・・。ところによっては田圃に水が入れられないため、田植えもままならないそうです。

かと思えば台風6号が沖縄に接近中。今年は台風の発生が早いそうですが、台風がらみでもいいですから、すこしは田畑を潤してほしいものです。

ところで先週、シジュウカラが鍋の中に営巣していた話をしましたが、知らずにその鍋を使おうとして巣が落下。さいわい卵はなかったものの、形態は似てはいるとはいえ違う鍋に、人の手が触れた巣がおさまることになりました。果たして親鳥がもどって来てくれるかどうか、ひやひやしていたのです。

毎朝、裏口を出入りするたびに勢いよく飛び立っていたのも間遠になって、半ば諦めかけていたのですが、今朝、裏口を出ようとしたらかすかな音が聞こえてきます。それはまるで窯出しした焼き物に嵌入が入るときのような、繊細なガラス細工のようなかそけき声です。もしやと思ってそっと寸胴鍋に耳を寄せて見ると、いました、いました雛たちが・・・。

もちろん姿が見えるわけではないんですけどね。おそらく孵ったばかりなんでしょう。冷たい鍋肌があたたかくなりそうなぐらい、元気のいい子供たちみたいです。そうか、親鳥が頻繁に出入りしなくなったのは、卵をあたためているせいだったんだ。シジュウカラという鳥の細かいことにはあまりこだわらない、繊細なようでいて大胆なところ、気に入りました。環境の変化に対応するため、次々と新しい戦略を生み出す能力にも脱帽です。

西洋人はバカのことをバードブレインなどといいますが、小鳥のちいさな脳みそはわたしたちの肥大した、ほんの数パーセントしか使いこなせない脳みそなどよりはるかに機能的みたいです。巨大コンピューターよりも実用的なマイクロチップ。この事務所の隣家の屋根の下、通風口のあたりで毎年営巣しているスズメのつがいも、きっとおなじようなマイクロチップを搭載している優れものなんだろうな、と思いながら、出入りする姿を眺めています。

それよりさらにちいさなコンピューターで動いているのが昆虫たち。身体が小さくなる分、まるで無から湧いて出てくるような神秘的なところがあるみたいです。たとえばアラレちゃんがタケノコを採りに竹藪に入ったとします。広い竹藪は見渡すかぎりしんとして、虫一匹見あたりません。それがタケノコを一本でも堀り出したとたん、ハエが飛んできて切り口が真っ黒になるぐらいになるんだとか。そういえばサハラ砂漠に旅したことのある友人の話でも、見渡すかぎりなにもない熱砂の中でサンドウィッチを食べようと思ってラップをはがしたとたん、パンの表面も見えないぐらい真っ黒になったといいますからね。その臭覚もさることながら、ハエの空間移動能力たるや、神業にちかいものがあるようです。

これから夏にかけて、米袋の中に発生する米虫やコクゾウムシにしてもそう。脱穀、精米という課程を経て、虫の卵などどうやっても付着できるわけがない条件にもかかわらず、ある一定の温度と湿度になると忽然と湧きだしてくるのです。この不思議さは、低気圧の接近とともに湧きだして、雨が降り出すころには消えてしまう無数の細かい羽虫に通じるところがあります。

有機農家のほとんどが経験しているヨトウ虫の大群もそう。はじめのうちはなにを作っても、それが育ってくるとヨトウ虫が発生して食いつくされてしまう。そこで農薬など使ってしまうとそれきりになってしまいますが、それでも泣き泣き種を蒔き、育てているとある日突然、見たこともないほど大量のヨトウ虫が湧きだして、畑にあるものを食べ尽くしたと思ったら、次から次と用水路などに身を投じて死んでしまうという事件が起きます。

この洗礼を受けると、その畑ではもうなにを作っても大丈夫。多少の虫はついても、それで作物がダメになるようなことはなくなります。これも不思議な話ですよね。害虫のはずのヨトウ虫が、じつは土壌の毒抜きをしてくれるありがたい益虫だった。いや、益虫どころか天使だったのかもしれません。

魅力的な昆虫はたくさんいますが、どうやら毛嫌いされている虫たちほど、神秘のベールをまとっているみたいです。これからそういった不可解な超能力者たちと遭遇する機会が増えてきますが、かれらとおつきあいするコツは、けっして闘おうとはしないこと。ハエや蚊やアブにたかられるたびに「ありがとう」といっていると、それが心にもない言葉でも不思議に意味は通じるみたいなんですよ。

今週の野菜とレシピ

今週は山形からオカヒジキが入りました。さっと湯がいて、醤油とマヨネーズで食べてもよし、軽く炒めて塩とオイスターソースで食べてもよし。シャリシャリした食感が身上の野菜です。

絹さやの量は先週の倍になりました。これぐらいあれば卵とじにしてもサマになりそうです。来週はスナップエンドウも出て来ます。

小松菜ほうれん草、シーズンオフという感じが否めないではありませんが、夏野菜が主流になってくると、当分青菜は姿を消してしまいます。今のうちに青菜のスープや味噌汁で身体を調整しておいてくださいね。