蜘蛛の巣天国

2015年7月第2週

今週の野菜セット

左から

梅雨空が続きますが、恵みの雨もこう長くなるといろいろ支障も出てきます。たとえばわが家のバジルなど、葉の表面に黒いシミができたかと思うと、そこから黄ばみが広がってきています。雨で枯れてしまうなんて植物にあるまじき行為、などと腹を立ててもしかたがありません。バジルにかぎらず、多湿に弱い植物には気の毒な天候が続きます。

そのかわり、今年は紫陽花がきれいですね。どっちを向いても花盛り。ここ数年、空梅雨がつづいていただけに、このときとばかりに咲き誇っているのかもしれません。色合いもきれいで、わが家の額紫陽花や山紫陽花など、あんたたちこんなに美人だった?というぐらい色が濃く、丸い集合花のタイプも例年なら野暮ったく感じられるのに、今年はそれがありません。道沿いに並んでいるのを昨秋、根元まで切りもどしてしまったのが悔やまれるぐらいです。

頭上では合歓(ねむ)が淡いピンクの花をつけ、梅雨の憂さを晴らそうとするかのよう・・。二;・三日畑に出ないでいたら、畝間の露草が満開になっていました。知らないうちに季節は動いているようで、先週あたりからもうニイニイゼミの羽音が聞こえます。真夏の蝉のような派手さはありませんが、低音で夏の間中伴奏を務める蝉。縁の下の力持ちのような存在です。

そして昨夕、カナカナ第一号の羽音を聞いて、そろそろ梅雨明けかと思いましたが、その前に台風9号の洗礼があるのでしたね。9号がうまい具合に逸れたとしても、11号が控えています。どの台風がどんな進路を取るにしろ、どこかでだれかしら被害を被ることになるのですが、どうであれ農作物の被害は最小限であってほしいものです。

こんな時期の山道はいたるところキノコだらけ。大小さまざま、色もとりどりのキノコが顔を出し、ものによっては群生しています。これが全部食べられないのがしゃくの種。

中でも目を引くのが、ホットケーキ大の茶色いキノコで、ほんとうにおおきさといい、色合いといいそっくりなんです。それがまあ、いい色に焼けて、しかも焼きムラがない。厚手のフライパンでじっくり時間をかけないとこうはなってくれません。冷めないうちにバターをのせて、バターナイフでボツボツ穴を開けたところにメイプルシロップをたっぷりしみこませて…なんて考えながら歩いていると、地面から顔を出している樹木の根に足を取られることになります。

人が通るところは雨水も流れやすいものだから、そこが水路になって余分な土を洗い流してしまいます。すると樹木の根が剥きだしになって、それが網の目のようにからまった道になります。急な坂では、晴れた日にはそれが滑り止めになるのですが、雨が降ると凶器に一変。うっかり足を乗せると、根っこの表面が油を塗ったように滑るので制御が効かなくなるのです。スパイク付きの靴でもダメ。雨の日はホットケーキなどに心を奪われず、h ひたすら足元を注視していなければならないのでした。

また人が通る道は人だけが通るわけではありません。うちの犬がしょっちゅう臭いを嗅ぎまわっているように、イノシシが通ればタヌキも通る。障害物がすくないので、虫にとっても飛びやすい道なのです。だから人が通る道には蜘蛛の巣が非常に多い。しょっちゅう人が通っていればそんなことはないんでしょうが、わたしが歩くのはほとんど人の通らないところですから、歩行者天国ならぬ蜘蛛の巣天国。そんなところに雨が降ると、蜘蛛の巣に水滴がからまって、あたりがまるで宝石箱のようになるのです。

どんなイルミネーションよりも精巧でうつくしい。そんな芸術品の上で、蜘蛛たちは水滴をひと粒ずつ、まるでシャンデリアの灯りを消すように落としているのでした。芸術では食えない、というのは人間界だけではないようですね。

今週の野菜とレシピ

今週はひさびさにニンジンじゃが芋が入りました。先週の玉葱やズッキーニが残っていたら、夏野菜のスープにしてはどうでしょう。

ズッキーニとニンジンは半月切りか小口切り。玉葱、じゃが芋も適当にひと口大に切ったら、大きめの鍋に全部放りこんで、水から煮ます。あればベーコンなんかも小さく切って加えてください。なければ塩、胡椒で調味した後オイスターソースを多めに入れればOK。トマトの水煮(缶詰でも可)を加えるとさらにおいしくなります。

時間のあるとき、こういうのを大鍋に作っておくと、食事の支度が楽になります。あつあつでも、冷めてもおいしいのですが、一日一回、しっかり火を入れるのは忘れないでくださいね。

今週予定していたピーマンは、相変わらず夜間の気温が低く、生育が遅れています。来週は青山さんのプチトマトといっしょに、好子さんの中玉トマトが入るかもしれません。