しぶとい盗み食い

2015年11月第2週

今週の野菜セット

左から

異常に暑かった夏の一時期を経て、秋風が冷たくなると紅葉も黄葉も色が鮮やかになるものですから、今年はさぞかしみごとだろうと期待していましたが、さっぱり秋が深まらず、鮮明とはほど遠いぼやけた色合いになっています。わが家の周辺のような低山でも、思わず見入ってしまうような絶景に遭遇することがありますが、今年はまだ出会えません。

朝夕と日中の気温の落差が大きいのも困りもので、風邪をひいている人も多いようです。昼間は汗ばむような陽気でも、日が暮れるととたんに冷えてきますから、夜はあたたかくしてお過ごしください。わが家も先週からストーブに火が入りました。

薪小屋に出入りするようになると、春先に積んでおいた薪の間から、一匹また一匹と玉虫の死骸が出てきます。メタリック・グリーンに赤いすじの入った宝玉のようなものですから、毎年宝石箱ならぬキャンディーの空き缶に入れておくのですが、どうしてそんなところから玉虫がぞろぞろと出てくるのか。

玉虫は樹木の割れ目などに産卵するので、その樹木を切ったり割ったりした薪はうってつけの産卵場所になるわけですね。そんなことなど露知らず、ストーブに薪をくべていたわたしはカミキリといっしょに玉虫の幼虫まで燃やしていたことになるのです。なんということを・・・。というわけで去年から薪を使う際、一本いっぽん確認して小さな穴のあいたものは残すようにしたところ、それまで一・二匹しかなかった成虫の死骸がぞろぞろ出てくるまでになったのでした。

知らぬこととはいえ、二十年ちかくも暖をとるため、卵やら幼虫やらを殺していた罪滅ぼしに、年明けには玉虫の餌となるエノキも植えてやるつもりです。春になったら裏山を歩き回って、エノキの苗木を探す予定です。そうしたらいつの日か、法隆寺にはおよぶべくもないけれど、玉虫厨子みたいなものが作れるかもね。もっとも素材があったところで、技術が伴わないのでは話にならないのかもしれませんが・・・。

玉虫のようにうつくしいものはさっさと産卵を終えて死んでしまうのに、畑にいるバッタやコオロギは産卵する気があるのかないのか、いまなおそこらじゅうを跋扈しています。日中の気温が高いものだから、いい気になっているんでしょうね。今週あたり、霜でも下りて気温が急降下すれば、繁殖する間もなく死に絶えてしまうのではないかと思うのですが、そううまく事が運んでくれるかどうか。

農耕の歴史にぴったり寄り添うように、何千年も野菜の盗み食いをしてきた連中のことですから、急に寒くなったところで、あらかじめ察知する能力なんかもちゃんと備えていて、抜け目なく子種を残して行きそうです。そんなしたたかな連中のことはさておいても、やっぱりここらあたりで霜でも下りて寒くなってほしいもの。そうすればほうれん草も小松菜も、格段に甘みが増しておいしいくなるからです。

もちろん来週に予定されているキャベツやブロッコリーだって、寒ければ寒いほど濃厚な味になりますからね。楽しみにしていてください。

今週の野菜とレシピ

レタスが入りました。これはサラダにするよりも、肉料理や野菜の妙めものを包んで食べたほうが美味。包むものはチャーハンでもいいし、ただ白いご飯にふりかけや辛子明太子を載せただけでもおいしいですよ。

ター菜は口あたりがやわらかく、味が濃厚な中国野菜。妙めものやあんかけ料理に最適ですが、さっと湯がいてあたたかいうちにちりめんじゃこを加え、胡麻油と塩少々で和えると、小松菜ほうれん草より繊細な大和撫子といった感じになります。これが出てくると、うちでは小松菜が売れなくなるんですよ。