初雪

2015年2月第1週

今週の野菜セット

左から

 この冬はじめて、雪らしい雪が降りました。といっても道路に十センチほど積もったところで止んでしまい、山間のわが家のあたりでも二十センチほど。気温も緩んで、夕刻には雨が降り出したので、早々に仕事を切り上げて、ひさびさの雪かきに闘志を燃やしていた当方は、肩すかしを食らう形になりました。 それでもいざ雪山へ、とこちらが意気込むほど犬のほうは乗り気でなく、実際に歩いてみると水分の多いベタ雪は滑りやすく、雨水といっしょに樹上の雪が落ちてきてずぶ濡れになる始末。あたたかい室内でホットチョコレートなど飲みながら、雪景色を眺めていたほうが正解でした。

 雪にも二種類あるみたいですね。雪の朝というと子供でなくても寝覚めがよくなるのは、雪の結晶から伸び出した微細な枝にマイナスイオンが宿るからだそうですが、雨降り同様、空気中にプラスイオンが立ちこめて、犬も猫も大人も子供も起こされなければいつまでも寝ていたいような雪もあります。

 先日の雪がじつにそれで、朝はまだ降りはじめたばかりでしたが、犬も猫もさっぱり起き出してくる気配がない。積もったころに出てくるのかと思ったら、家人の話ではお昼になっても姿を見せないので寝室を覗いたら、犬も猫もベッドの上で丸くなっていたとのこと。具合でもわるいのかと突かれて、いやいや起きては来たものの、外へ出るでもなし、ご飯を食べるわけでもなし、ましてや嬉々として雪とたわむれるなど、歌の文句じゃあるまいし・・・という感じだったそうです。

 そんな調子だから、あんなに好きだった雪山歩きも、今回はありがた迷惑だったみたいですね。それにしてもこの差はどこから来るんでしょう。雨をもたらすのも雪をもたらすのも低気圧。その低気圧につきもののプラスイオンが雪の結晶によってマイナス化されるのだとしたら、それがしっかりとした形状を保っているか、崩れて液状化しかかっているかの違いなんでしょうか。だとすると気温の問題ということになってきますが、先日も雪が降っている間はものすごく寒かったんですね。

 しかも当日はテンションが低かったにもかかわらず、翌日になると残雪の中ではしゃぎ回っている犬の姿を見ると、ますますわけがわからなくなってきます。この科学オンチと方向オンチは一生治らないのかもしれませんね。

 地面に雪があるうちは、鳩やスズメの餌もいつもの餌台ではなく、軒下にばらまかれます。それに混じって渡りの途中、この時期だけ見かけるきれいな小鳥たちが見つけやすくなるのも雪の効用。パソコンの画像や図鑑を見てもよくわからないのですが、近所の野鳥に詳しいおじさんにも聞いて、ようやくかれらの名前がわかるようになりました。お腹がオレンジがかった茶色なのがジョウビタキで、黄色いのがキビタキ、お腹がきれいなピンクで、鳴き声が子供が口笛の練習をしているように聞こえるのがウソ。ウソはメジロと並んで闇のコレクターが多く、密猟の対象になりやすいんだそうです。

 不思議なことに、こういった一見のお客さんたちのほうが鳩やスズメといった常連客より警戒心がなく、観察しやすいんですね。このヒタキのつがいは去年、ここに立ち寄ったのとおなじカップルなんだろうか、とか、いつもつがいでしか見たことのなかったシジュウカラが一羽しかいないけど、どうしたんだろうとか、思いは漂っては消えてゆきます。また来年も立ち寄ってもらえるように、お膳の中身も毎年改良しています。

 お膳といえば、冬至に使った柚子が風呂場の窓の下にいくつか転がったままになっていたのですが、年が明けてだれかがそれを啄んでいることが判明。二・三個あった柚子も姿を消してしまったので、フルーツセットに使っている柑橘類にすこしでも傷があると、せっせと持ち帰って枝に刺したりしていたんです。だれが食べているんだろう、ってわくわくしていたんですよ。そしたらねえ、とうとう見てしまったんです。お客さんの正体は、な、なんとヒヨドリで、わたし、へなへなと腰砕けになりそうでした。

 ヒヨドリとわかったからといって、柑橘類の提供をやめてしまっては大人げないと思うのですが、今朝、うちの猫が野鳥らしきものを咥えてわたしの部屋に駆けこんだのを見ると、ほかでもないヒヨドリだった。ああ、ほかの野鳥でなくヒヨドリでよかった、と胸をなで下ろしたのも事実。えこひいきはいけません。でも、ドバトはきらいだけど山鳩は好き、とか、おなじようないたずらをされてもタヌキなら許せるけど、ハクビシンは許せないとか、わたしたちって不公平のかたまりみたいなもんですからね。やっぱり柑橘類はわたしが食べることにしたしだいです。


*追記

 イスラム国の人質になっていた後藤健二さんが亡くなりました。だれもが薄々そうなることを知りながら、口にできずにいたのでしょうが、それを報じる朝刊の軽さとは対照的な闇の深さに呆然としています。事件の重さとは対照的な、この国の首相の軽さにもですけど・・・。